大丈夫?

カッカッカッ
ヴァンクールは控え室をでて暗くて長い廊下を走っていた。

『ヴァン、大丈夫?』
(あぁ。)
ヴァンクールは走るのをやめて近くの壁にそっともたれかける。

「っ痛!」
突然の痛みにヴァンクールは両腕をかかえるようにして、地面にしゃがみこんだ。

ヴァンクールは痛みの発生源である腕に目をやった。
「…」
ちゃんと見るのははじめてで、予想以上に黒焦げなのを見て、あの雷撃の威力を思い出す。

『ヴァン?』
マリが心配そうに腕を見つめている。
ヴァンクールはマリに小さく微笑んだ。

すると長い廊下の奥から、カッーカツ…
と、きっと女性のものだろう。ハイヒールの音だ。

ヴァンクールは両腕を見えないように、小さく丸まってしゃがんでいた。

「明日、試合なんでしょう?治療しますよ。」
ヴァンクールは聞こえてきた優しい声に顔を上げると、ナースなのだろう。ー白いナース服をまとっている女性が心配そうにこちらに向かって来ていた。

ヴァンクールは壁にもたれかかりながらゆっくりと立ち上がる。
「お願いします…」
さすがに迎えに来てくれるとまでは思わなかったから、ヴァンクールはきちんと礼をしてその女性について行った。


ーーーー
その頃…

コロシアムは静まりかえっていた。


「うそっ!?」
シエルは声に出したが、誰もがそう思っただろう。


ヴァンクールたちがいなくなってから、リングの上では次の試合、ヤマト対カルロスが始まっていた。
準決勝であるのだから、相当力強い試合のはず…
だったが、

カルロスが弱いのではなかった。彼もかなり強い人間だった。
しかし、ヤマトが強すぎたのだ。
シエルと試合をしていた時よりも、技のキレやスピードが上がっている。

ヤマトは試合開始直後に心刀を使って、カルロスの手首を一瞬にして斬りつけた。
それにより、カルロスは降参したのだ。


観客みんなが唖然としていただろう。
今までの試合で一番、歓声が小さかったかもしれない。

(ヴァンクールはあんな化け物と戦うのか…)
アシェルはヴァンクールが辛い怪我をしないか、正直かなり心配していた。


「決勝は明日の正午!
皆さん!また明日!」
審判が大声で叫びながら、最後にまたコロシアムは熱狂の渦に包まれた。


[*前へ][次へ#]

29/63ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!