アシェルと鷺

ヴァンクールがシエルを色んな話をしているとき、
不意に病室の扉がノックされた。
「どうぞ。」

シエルの声に導かれて入って来たのは
「ヴァンクール。おめでとう。」
アシェルとランナだった。
「あぁサンキュー。」

「ところで話なんだけど。」
いきなりアシェルから話をきりだしてきた。

「サギリなんだけど、あの人に絶対勝ってくれ。
圧倒的な力で。」
ヴァンクールは何も言わす無言で聞いている。
「あいつは絶対に俺たちの力になってくれる。
時雨さんにも頼まれてるんだ。サギリを連れ戻せって。」

「ヴァン…」
シエルが心配そうにヴァンクールを見上げる。
それに気づいたヴァンクールがシエルをちらりと見て微笑んだ。
もしヴァンクールをサギリが恨んでいるのなら、そう簡単に言うことを聞くのか…

「わかった。アシェル。
サギリをミカミに戻るように説得する。」
ヴァンクールはアシェルを強い眼差しで見つめた。

「アシェルは頼まれてるからサギリさんを連れ戻すの?」
ランナが不思議そうに皆が気になっていることを聞いた。

アシェルはすこし戸惑った。
「俺は…
あの人は俺たちと同じで、この世界を守りたいんだ。セイカも倒したいし。」

「だったら騎士も一緒なんじゃ、」
ランナが尋ねると、アシェルは
「あんなに力ずくじゃない。あの人と話して、全然悪い奴に見えなかった。
説得さえすれば、心強い仲間になってくれる。」
するとヴァンクールが
「そうだな。元々悪いのはアストラシアのサラバなんだ。命を狙われるのも嫌だしな…」
アシェルににっこり微笑みかけた。

「ありがとう。
じゃあ明日、試合頑張ってな。」
アシェルもにっこり笑って、ランナと病室を出ていった。



(やっぱ似てるんだよ。)
『カレンちゃん?』
(うん。
国のためならなんでもするところとか、ちょっとバカなところとか。
こんな私情だけでみんなを振り回すのはいけないよな…)
『いや。
僕もサギリはいい子だと思うよ。きっと事実を知らないんだ。』


…そうだ。
ヴァンクールは
「アシェルの望む世界に」
と言った。
セイカの心刀にはならない、なにか秘策があるんだろう。

でも、もしそうなってもセイカを倒すためにヴァンクールは…


(俺たちはなんでみんなで協力出来ないんだろう。)
『みんな窮地に立っているから、一番早い方法を選ぶんだよ。
ヴァンクールがカストレに「セイカを倒す方法がある」とでも言えばよかったけど、それでセイカが殺すのはヴァンクールだよね。
セイカも国王が認めた騎士なんだから、知る権利がある。』
(というか、国王がセイカを怖がっているから、そんなことを言えば騎士がヴァンクールを殺すように命令するだろう。)

太陽の力…
これを使う以外に、何か方法はないのだろうか。
そもそも、セイカは何をしようとしているのか。



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あきゅろす。
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