三回戦終わり。

3回戦だけあって人数が16人にへったからか、ヴァンクールの試合も相当早く回ってきた。

「4試合目はヴァンクール対スレッド!」
その声とほぼ同時に西の入り口からヴァンクールが入場してきた。
スレッドは若くて背の高い強そうな青年だ。

「あれ?ヴァンクール、えらく厚着じゃない?」
ランナが目を丸くしてヴァンクールを指差す。
そういえば、ヴァンクールはいつもシャツに様々なズボンというようななかなかの薄着が印象深いが、
今日は上はカーディガンを着ていて、下は七分の楽そうなのに目立つ色のスニーカー。

「大会でおしゃれしてどうすんだ…。」
アシェルは額を呆れたように押さえて深くため息をついた。
「ヴァンって、スニーカーいっぱい持ってるんだよー。」
ランナがアシェルを見てにっこり笑う。
アシェルはちらりとランナを見て、
「へっ?へぇー」
苦笑い。

(そんなこと聞いたっけ…?)

「それでは、はじめ!」
なにやらゴタゴタしている間に試合が始まってしまった。


先に動いたのはヴァンクール。
何故かどこから持ってきたのか、右手にはナイフ、左手には短刀を握っている。

「ヴァンクール、心刀つかわないのか。」
アシェルがモニターに写し出されているヴァンクールを見つめながら小さく呟くと、ランナが
「じゃああの服に武器を隠し持ってるんだねー」
と顎に指を立てて目を丸くしている。

ヴァンクールのはじめて見る二刀流。
スレッドはなかなか優雅に避けているが、やはり腕は確かなのだと思わせる。

その時、スレッドの手元が光輝く。

「「っ!」」
みんなが息をのんだ。
スレッドの手元に現れたのは大きな矛だ。
先の部分が異様にでかく、まるで大剣のよう。

ヴァンクールは目を細めてからカーディガンの首すじに手を突っ込んだ。

誰が見ても、何か出すのかくらいはわかる。
アシェルもあのカーディガンの中から何が出てくるのかドキドキした。


スー。

ヴァンクールの腕が引き抜かれていく。
するすると見えてくる金属の塊に誰もが絶句…
である。

「ヴァンクール…!?」
アシェルは「嘘だろ!?」というようにランナも見たことがないくらい驚いている。

あのカーディガンからあんな"グレネードランチャー"がでてこれば、誰でもびびるだろう。
(四次元。)
ランナもそう思った。

「ってか、こんなところでぶっぱなしたら会場爆発、相手死亡だろ。」
アシェルがモニターを少し引いたように見つめながら呟いた。
「グレネードランチャーのお試しかな。あと会場はつぶれないよ!」
「そうなの?」

ヴァンクールはグレネードランチャーを静かに構えている。
スレッドもはじめは引いていたが、当たれば即死なので本気になって槍を構えている。


ヴァンクールが静かに息を吸った。
スレッドは素早く反応し、その場を一瞬で離れる。

ドンッ!

恐ろしい轟音がなり、一部の女性などの叫び声が聞こえた。

アシェルも 目をつむっていた。
自分の身に変化がないことがわかり、ゆっくりと目を開けると。
客席にはなんともなく、リングが見えないほど煙たくなっていた。

アシェルが目を凝らして見ていると、やがて煙がはれる。
リング上には
「やっぱりか…」
スレッドが喉元にナイフを突きつけられていた。
グレネードランチャーは転がっている。


「ほら。早く、」
リング上の音声が拾われているようだ。
ヴァンクールの低い声がコロシアムに良く響いた。
スレッドは静かにうなずいて、
「参りました。」


「「わー!」」
その瞬間、ものすごい歓声に包まれる。


その歓声のなか、アシェルがランナの肩をつつく。
「なんかリングに細工してんのか?」
ランナはにっこり笑って、
「バリアだよ。
毎年、決勝なんか恐ろしいからバリアなかったらみんな死んでるよ!」
「なるほどなー。」


まだ昼にもなってないから4回戦もするようだ。
優れた医療には感心するばかりである。


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