三回戦始まる

ヒロとランナはコロシアムを出て、宿へ向かっていた。

ランナはスキップしながらヒロの少し先を行っており、くるりと回転してヒロの方を見て微笑んだ。

「ヴァンってば圧勝だったねー」
と右手でブイサインをする。
ヒロは周りをうかがってから、
「いやぁ、今日の人は激弱だったな。」
とこそこそ言った。


ランナはにっこり笑ってから、またくるりと前を向きなおして前方を歩く。


宿について自分たちの部屋を開けると、そこには見慣れた銀髪がいた。
「アシェル!帰ってたんだ。」
ベッドの上に座っているアシェルの隣にランナは飛び込んだ。
「さっき帰って来た。」
アシェルは機嫌がよさそうにうなずく。
「あっ。アシェルさん、ヴァンが勝ちましたよ。」
ヒロがカッターシャツを脱ぎながらアシェルに微笑む。

アシェルは「さすがだなー」とつぶやいてから目を丸くして
「シエル…負けたの!?」

ヒロは困ったようにうなずく。
「あれは完全に相手が悪かったですよ。」

「そうなのか。」
するとランナがアシェルの膝の上に顎をのせて
「ヴァンよか速いかも…」
「…えっ。」

誰もアシェルが今日、どこで何をしているか聞こうとしなかった。

ーーーー

翌日
「じゃあ俺は行ってきます。」
ヒロはアシェルたちがコロシアムに行く少し前に宿を飛び出していった。

「じゃっ。俺らも行きましょうか。」
アシェルは大きくのびをしながらランナを見下ろすと
ランナは
「おっけー!」
と親指を立ててウインクした。

今日は一試合目から見ないといけない。
なんせ鷺が戦うからだ。

アシェルは自分でも鷺をどうしたいのかよくわからない様子である。
しかしひとつだけ言えることは、鷺が悪者ではないということ。
もしかしたら味方にすることも可能ではないかと思っている。


ーーーー

「一試合目!
鷺対アラン!」
この審判の一言で一瞬でコロシアム内が熱気に満ちた。
あたりは耳を塞がないといけないような歓声。

アシェルはふとリングに目をやった。
リングの上にはあのさらさらの黒髪の鷺がブラウスにスカート姿でたっている。

「はじめ!」
ボーッとしていたランナが審判の声を聞いて、肩が跳ねたのをみてアシェルは微笑んだ。

そしてリングに目をやると、
「んっ…」
アシェルは微笑んだままリングをボーッと見つめた。

「しょ…勝者鷺!」
まあ3回戦にもなってこんなに一瞬で試合が終わるなんて、誰もが目を疑っただろう。

鷺は本当に一瞬で相手のアランを倒してしまった。

コロシアムは
「おぉー」という驚きの歓声と共に大きな拍手に包まれた。

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あきゅろす。
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