2回戦

出場者のみんなかなり疲れているようだったから、あっけない試合はとことんあっけないものだった。
こんなに有名な闘技大会が、こんなにてきとうでいいのかなど、思うことはたくさんあるが…
「試合番号6。ヴァンクール対デリス」
ボーっとしていたヴァンクールだったが、中にいた役員の大きな声に現実にひきもどされた。

ヴァンクールはすくっと立って急ぎ足でリングへと向かう。

そしてまたもやとんでもない歓声と拍手にむかえられて、ヴァンクールと、対戦相手は入場したのだった。
「では、はじめ!」

前回のシエルのこともあり、一応ヴァンクールは心刀に加えいつも使っている大切なバタフライナイフと万が一のために、だれにもわからないようにシャツのなかにハンドガンをしこんでいた。

ヴァンクールは試合が始まっても相手のデリスが全く動こうとしないので、いちかばちかで突撃する。
狙うは、頭と首の境目。そこを思い切り蹴飛ばしてやる。
ヴァンクールが動き始めたにもかかわらず、デリスはまだ動かない。
ヴァンクールはよくわからないまま、デリスの後ろにまわって思いっきり頭を狙う。

ビュッ…

ボコン!

ヴァンクールは空中で目を丸くした。
デリスが思い切り吹き飛んでいったからだ。

審判が倒れているデリスを見てから、
「ヴァンクール!3回戦進出です!」
と叫び、もう聞きなれた歓声。

(この人全く見えてなかったんだ…
相手の力量がわからないなんて、まだまだだな。俺も…。)
ヴァンクールはため息をついて戻っていったのだった。


途中のアナウンスにより、今日の試合が2回戦までと伝えられた。

それを聞いて、ヴァンクールは再びシエルのところへ向かう。
「シエル。」
病室の扉は開いたままだったのでヴァンクールは入口のドアをノックせずに入ってきた。

「ヴァン!3回戦出場おめでとう!」
シエルは病室にあるテレビで一部始終を見ていたらしい。
「もう大丈夫なのか?」
ヴァンクールはいつもよりひとまわり元気ない声で話しかけると、
「大丈夫大丈夫!」
と元気のよいいつも通りの声が返ってきた。

「なあ、あのヤマトって…。」
「ヴァンが決勝に行ったらおしえてあげるよ。」
見事に話を途中で打ち消されてヴァンクールは頬を膨らませた。
「でも、ヴァンなら勝てるよ。」
根拠がどこから来るのかわからないが、にこにこしているシエルをみて、こちらも微笑む以外にすることなんてなかった。



[*前へ][次へ#]

16/63ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!