やるせない
「はっ!」
「うわあぁあー!」
急にヒロが起き上がったことで、ベッドの隣でうとうとしていたヴァンクールはあり得ないほど絶叫した。
ヒロは荒い息をしている。
「はぁはぁ…ご、ごめんな。」
ヒロは苦笑いしてヴァンクールに謝った。
ヴァンクールはいまだに、いかにもドキドキしているように、目を見開いている。
しばらくしてから、
「あっ。大丈夫、」
と冷や汗をかきながら微笑した。
話しによると、ヒロが外で倒れているのを、いつまでも帰ってこないのを心配したヴァンクールが見つけたようだ。
ヒロはそのヴァンクールの説明をろくに聞かずに、ただ
(セイカの能力についてしってるのか、それだけを考えていた。)
ヴァンクールは眉をよせて
「何してたんだよ、」
と、心配げに問いかけた。
ヒロは一度したを向いてから、
「姉の椿に会ってた。ランナと契約したって聞いたよ…」
「…。うん。」
ヴァンクールは辛そうに相づちをうつ。
「シエルは知らないから、言うなよ。」
もしシエルに言ってしまえば、どのように言われるかくらいだいたい予想がつく。
「わかってる。
あと…」
ヒロはヴァンクールの不思議そうな顔を見る。
これを言ってもいいのだろうか。
「寛人、話して。」
ヴァンクールが急に真顔になって低く呟いた。
ヒロの迷いを解消するには充分だ。
ヒロは一度うなずいてから
「セイカの能力は"心刀の力"誰の力も何個でも吸収できる。」
それを聞いてヴァンクールは体の毛が逆立つのを感じた。
しかし、そのまま唇を噛み締めて、
「やっぱり、そんな感じの力なんだ。
俺は今まであきらか違うような力を使ってるのを何回か見たことがある。
それは何か力を工夫してるんだと思ってたけど…」
そしてすぐにヴァンクールは隣のベッドに寝転がった。
「あー。」
大きなため息と、疲れはてた声、
ヒロにはヴァンクールがどんなことを考えているのかはわからなかった。
ただいま12時。そのまますぐにヴァンクールは眠りについてしまったのだった。
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