知らなかった外の世界

「ひとまず、バレンチアの人から話を聞いてみなよ。」
ヴァンクールは笑いながら言った。
「カストレ人として、殺されないか?」
アシェルは恐る恐るきいた。

「大丈夫。
カストレから出てきただけでもう、カストレ人じゃないよ。」
ヴァンクールの言葉がアシェルの胸に強く早く突きささった。
(俺はもう犯罪者なんだ。)
そう。もうカストレには帰れない。

「バレンチアに行くよ。」
アシェルは決めた。
ヴァンクールはそうかえしてくるとわかっていたような笑いをこぼして、
「名前。聞きそびれたよね、命の恩人。
てっきりフレイルを無理やり心刀にしたのかと思ったんだ。
カストレ人ならやりかねないから。」
アシェルはその言葉を聞きながらフレイルが助けてくれたことを思い出した。

「アシェルだ。」
(フレイル…お前はカストレに来て何をしたかったんだ?
あんなに国のことを考えてたっていうのはやはり嘘なのか?)

ヴァンクールに聞きこうとしたが、
チンッ
エレベーターがやっと止まった。


扉がゆっくりと開く。

ー草原だ。
永遠に続く広い…

「あれ?アシェル。」
ヴァンクールが顔を見上げてる。
「カストレと変わらない景色だろ?」

アシェルは頬をさわった。
濡れている、
「違うよ。こんなに広い草原ははじめてだ、こんなに広いのか。」

するとヴァンクールは笑って
「ううん。もっと広い。
アシェルが思っている以上に世界は広いんだー。」


やっとアシェルの物語ははじまる…


[*前へ][次へ#]

2/13ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!