夜の宿屋

「ねえ。大会いつなの?」シエルが尋ねると、受付の女の人は「そんなこともしらないの?」という顔をしてから
「明日が予選ですよ…」


「うっわー!ありきたりなこのパターン!」
アシェルがすっとんきょうな声を出してヴァンクールを叩いた。

ヴァンクールはよろめいてから
「ってぇな…。アシェル、どうした?」


アシェルの謎のテンションの理由は誰にもわからなった。



ーーーー

〜ソルフレア宿屋〜


「何部屋とる?」
ヒロが宿屋の受付の前に立って、後ろを振り向いた。

「ほんとだね、」
ランナが眉を歪ませて笑う。
「うーん。3だな。」
ヴァンクールは謎のメモ帳を見ながら呟いた。
「ごめんね〜。あたしが女なばかり。」
シエルが苦笑いで頬をかいた。
「きにすんな!」
ヒロがシエルの頭をポンとたたく。



「グッパでわかれましょ!」
男子一同の部屋割り。

グーがランナ、アシェル
パーがヴァンクール、ヒロ。

「じゃあ。また明日ね
今日は各自自由!!」
シエルが嬉しそうにてをふった。


ーーーー

「アシェルなんで大会でなかったの?」
ランナは部屋についてからすぐに地面に転がった。

アシェルはうーんと考える動作をしてから
「俺はこの国を調べるつもりなんだ。この国には城があるから、カストレと色々関わってる筈だ。」
ランナはうなずいて
「うん。この闘技大会は有名だからね、きっとカストレの王族も来ると思うよ。
この闘技大会って貴族の暇潰しなんだ。」
下を向いた。

アシェルはうーんと伸びをしてから窓の向こうを見る。

空はもう真っ暗で、カストレの人工の空と大差なかった。



ーーーー

「寛人?」
部屋についてから、ヒロがすぐに部屋を出ていこうとしたので、ヴァンクールは引き留めた。

「ちょっと風に当たりにいくから。」
と言うなり出ていってしまった。


(明日頑張るな!
なるべくマリを使わないようにするから。)
マリはにっこり笑って
『予選なんて余裕だよ、』
「ありがとう。
暇だな、シエルの部屋でも行くかー」

ーーーー

シエルは部屋に入ってベッドに座って大きなため息をついた。

(あたし…あまいのかな。)
シャインはシエルの隣に座って、
『シエル、殺しはやめてよ。ヴァンが言ってるでしょ。「人を殺すことは、覚悟とその後の苦しみに耐える力がいる」って』
シエルはベッドにばったり倒れて

「あたしには、許せない騎士が何人かいる。そいつらだけは倒したいんだ…
でも、この前。いざ敵を前にすると、」
その時
「シエル…」
聞きなれた声に、シエルはバッと体をもちあげる。

「ヴァン…」
「ごめん。取り込み中ならでてくよ。
呼んでも返事なかったから、勝手に入ってきた。」

シエルは眉を下げたまま、にっこり笑う。
「いいよ。ヴァン、あたしの悩み聞いてよ。」

ヴァンクールは何も言わずにシエルの隣に座った。
「ヴァンが最初に人を殺したとき。どんなこと思った。」
それを聞いてヴァンクールは目を大きくしてシエルを見てから睫毛を伏せて前を見た。

「俺が最初に殺しをしたときは意識なかった。
それからは…。殺すときにあまり何も考えなくなった。」
シエルはヴァンクールの顔をちらりと見る。

「でも、時々一人になると今まで殺した人や殺された人の知り合いとかにすごく攻められるんだ。」
ヴァンクールはぎゅっと体を丸める。

「俺が人を殺すとき、俺はふいに自分の中にある過去の怒りを思い出すんだ。
でも、俺がその人を殺すことによって。また復讐が生まれる…。
俺が命を狙われることは、…しょうがないことなんだ。」
シエルは何も言わずに下を向いている。

「シエル。お願いだから、人を殺すのはやめろ。」
シエルは顔をあげる。

「でも…シャインを殺したのはイクサだよ。アルフとフェアリーさんを殺したのはウェルテスだよ。
許せないよ…」
今にも泣きそうだ。

「シエルには、それを一生負う覚悟があるの?
俺みたいに、何も思わずに人を殺すようになったら…終わりだ。俺みたいにならないで。」
ヴァンクールはじっとシエルを見つめる。

「俺はこうなってしまったから、もうきっと止まれない。セイカは殺す…
俺が死んだときは…」


「バカッ!」
ヴァンクールが話している途中でシエルは言葉を遮って怒鳴った。

「死ぬとか言わないで…」

その時、一瞬だけヴァンクールは真顔になった。
その後すぐに口元を緩めてシエルの頭にポンと手をおく。

「…ごめん!
とにかく、人殺しにはなるな。俺が死んだら嫌なんだろ、…それと一緒だ。」
そういってヴァンクールは部屋を出ていってしまった。



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