俺の力


まだ刺青は光っている。
「フレイル…」
(まさか俺が主になってしまうなんて。)


そして光はだんだん小さくなって消えた。

「フレイル死んだんだな。」
少年まで悲しそうな顔をしている。
……

「フレイルを知ってるみたいな言い方だな。」
アシェルは先ほどの言葉を思い出しながら言うと、少年は驚きの事実を言った。

「フレイルはバレンチア人でカストレにスパイに来てたんだ。
…戦争を起こさせないために…」
アシェルはただぼんやりと聞いているだけで、怒る気になれなかった。カストレはもう関係ないから…

ウィーン。
音をたて、エレベーターはとてもゆっくりと下りている。静寂のなかに響く振動や音がアシェルを余計に虚しい気持ちにさせた。


「ところで、この手錠。
取ってくれない??」
少年が不意に言った。
その声に反応してアシェルは少年の顔を初めてちゃんと見た。
頬は腫れ上がり、口には血が固まった跡がある。
「拷問されたのか??」
アシェルは手錠にナイフを当てて慎重に鍵を壊していく。

「ちょっと喧嘩したんだ。」
少年はにっこり笑った。
ガシャンと音をたてて手錠は落ちた。
そのまま続ける、
「俺はヴァンクール。
助けてくれてありがとう。」
「俺はア…

ヒュッ。
!!
ヴァンクールがアシェルの顔の前に広げた手を寸止めした。アシェルにはヴァンクールがその瞬間とても冷たい顔になった気がした。
「なんだよ!びっくりするだろ。」
アシェルは心臓が止まるくらいびっくりしている。

しかしヴァンクールは、ポカンという顔をしている。
「あんたの力ってなんだよ…」
アシェルにそんな質問されてもわかるわけがない。
「俺、まだ自分の力わかんないんだ。」
アシェルは左手を頭に添えていった。

(…俺はこの男を殺すつもりで力を使ったのに、かきけされた。)
「あんたの力は能力を無効にする力じゃないかな。」
アシェルはびっくりした。
自分の力があっさりわかったことや、何かしらの能力をヴァンクールが使ったこと。

(邪魔だから殺そうと思ったけど、フレイルはこいつに宿ってる…
誇り高いバレンチア人を心刀にする資格はあるのかもしれないな。
フレイルにこいつに使われて嬉しいのか聞きたいけど…)
ヴァンクールはかなり考えている。

「ヴァンクール。俺をどうしようとした。」
すると即答。

「フレイルを使うのに相応しい人間かどうか確かめたんだ。」
あまり答えになっていない。

アシェルは深いことを考えずに
「俺は考えてたんだが、本来フレイルの心刀になるはずだった。
だからまずはフレイルの願いを叶えたい。って思ったんだ。」
と、思ったことを口に出した。


するとヴァンクールはふうん。って顔をして、


「フレイルの、バレンチア人の願いは俺を心刀にさせないことだよ。」
ヴァンクールはアシェルの目を見て言った。

「これからどうする?バレンチアに来る?」
(行く場所なんかない。もし本当にヴァンクールを心刀にさせないことが願いなら、やらないといけないと思う。)




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あきゅろす。
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