アシェルとカレン

森の奥には神社があった。

その前でアシェルは走るのをやめ、カレンの方にむきなおす。


「アシェル。私は昔から騎士になりたかった。それはアシェルも知ってるでしょう?」

たしかにカレンは中から国を正すと言った。


「アシェルはカストレに帰って来ない気なの?」

その言葉はアシェルの心を深くえぐる

「俺は…。外部からカストレを変えようとしてる。カストレと世界の戦争を止めようとしたけど、バレンチアは滅んでしまった。」

カレンは身を前にのり出し、両手を前にだして
「なんで、そんなにバレンチアを救おうとするの!?
バレンチアは私たちを殺そうとしてた!
今のアシェルはカストレよりもバレンチアを優先してるよ。」

アシェルは下を向くしかなかった。
「ヴァンクールがアシェルを惑わしてるの?脅されてるの?」

「違う!
俺は犠牲なんか出したくないんだ!ヴァンクールは悪くない。」
カレンは下を向いて震えている。

「…そんなの綺麗事だよ…」
涙声でカレンは震えている。


『アシェル。カレンに本当のこと言えばいいんじゃない?』
カストレが心刀のためにバレンチアを襲っていたこと。

(ダメだ。カレンには安定した地位があるのに、混乱させちまう。)


「カレン。」
アシェルは真剣な眼差しでカレンの方へ歩いていく。

「俺はヴァンクールを守る。そしてセイカを倒す。それじゃ駄目なのか?」


カレンは左右に頭を振りながら後ずさった。
「セイカは倒せないよ…」

「そんなことわからないだろ?みんなで力を合わせれば、セイカを倒せると信じてるから。」

アシェルはカレンの近くまで近づいて来ている。
あと1mほどのところでカレンは合っていた目線を下に反らした。

その瞬間。
アシェルはカレンの手首を思い切りつかむ。
「いた…。」

「今回だけは見逃してくれ。」
自然と2人の目が合う、


そのままアシェルはカレンを引き寄せ、抱き締めた。「アシェル…」

アシェルはカレンを抱き締めながら目を閉じて唇を噛んだ。
「ごめん…」

―トンッ
「あっ。」
アシェルの手刀をもろにくらい、カレンの体は崩れた。

アシェルはカレンの体を抱き抱え神社の柱にそっともたれかけさせる
「本当にごめん。」

アシェルはカレンをじっと見てから背を向けた。


(カレンだけは、傷ついてほしくない。)


お願いだからもう俺たちの前に現れないで。


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あきゅろす。
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