三人
赤い髪を二つにくくった儚げで可愛らしいあの子は、私を好きだと言った。
長髪のお人形のようなあの子も、私を好きだと言った。
どっちかを選ぶなんて出来ない私は果てしなく優柔不断で。どちらも好きだから、ずっとお友達で居たいし、その関係を崩してしまうような事を自分からするなんて、無理だ。
二人に挟まれた私は、苦笑しながら考える。
「いくらベルンでも、名前は渡せないわ。」
「あら、あなたを戦人に会わせてあげた恩を忘れた、というのかしら?」
互いににらみ合って私の腕にくっついている二人は、なんだか子供のようでおかしさがこみ上げてくる。
「ねえ名前、あなたは私とお昼ご飯を食べに行くわよね?」
「あら、愚問ね縁寿。名前は私と行きたがっているわ。」
よわったなあ。二人の問いに私は苦笑しか浮かべられない。仕方なく、お決まりの台詞を言う。
「三人で行こうよ、ね。みんなで食べたほうが美味しいよ。」
「…」
「…」
二人は、少し納得のいかなさそうな顔をしているけど渋々といった感じで頷いた。その様子にほっとする。
分かっている。これは逃げているだけなのだと。これは二人の気持ちを踏みにじるような最低な行為なのだと。こんな最低なわたしのどこを、この二人は好きになったのだろうか、不思議でならない。
悶々と考えつつも、お弁当を持って芝生のベンチに腰掛ける。高そうなベンチと長机は、レトロな作りでとてもかわいい。
「今日はお天気いいね。さあ、食べようか。いただきまーす。」
「「いただきます」」
もう、こういう変なところで気があうんだから、この二人は。声が重なって顔を見合わせる二人がおかしくて笑ってしまう。そうしたら、二人も笑ってくれた。
このまま三人じゃ、だめなのかな
(だめ、なんだよ)
コイビトなんて特別な関係はいらないから、ずっと仲良くしていたいのに
(二人は違うんだよね)
「名前、あーんしてちょうだい。美味しいわよ、これ。」
「ベルン…!ほら名前、こっちのも美味しそうでしょ?」
ずい、と箸でつままれたおかずが二つ目の前に差し出された。まずベルンのを食べてから、縁寿のも食べる。
(…、縁寿の方が美味しいかな。)
でもそんなこと、絶対いえない。どうしてなんだろう、ああ、友達同士という関係なら気軽にいえるのに。
「どっちも美味しいね。うん。」
お礼に私のもあげる、とちょうど二つ入っていた玉子焼きを二人のお弁当の空きに入れる。二人が嬉しそうにしてくれたので、また今度作ってこようかな、と思った。
「ほら名前、ついてるわよ」
「んぶ、自分ででき、ん、」
ぐいぐいと可愛らしいハンカチで縁寿に口元を拭われる。それを見たベルンが、果物を食べてべたべたしていた手を取って口に寄せる。
あ、まずいな。そう思うよりベルンが行動する方が早かった。ぺろ、と薬指が舐められる。
「ひっ、ぎゃあああ!ななな、なんで舐めっ…!」
「汚れてたからに決まっているじゃない。」
「だから自分で出来るってば…!」
これじゃあ、心臓がもったもんじゃない。ばくばくと脈打つ心臓に、肺が冷えたような感覚。び、びっくりした。
そんな私を余所目に、二人はばちばちと火花を散らしていた。
この二人のどちらかが居なくなってしまうなんて、
私はいや、なんだ。
答えは出ないまま
(少女の葛藤と苦悩は続いてゆく)
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うだうだ優柔不断な夢主が書きたかったんです
090716 初季
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