百合で主が攻めくさい
「ハッピィィィイ・バレンタイイイン!」
「…ベアト、もうすこしおしとやかにできませんの。」
耳鳴りがしそうな大声で入ってきたベアトを、なだめる。
ハイテンションで入ってきたベアトの手には、板チョコ。
ああそういえば、今日はバレンタインでしたね。
「…段々お師匠様に似てきやがったなァ、名前。」
「あんなに優美な女性の元で修行して未だにそんなに粗暴なあなたが信じられませんね。」
ぱたりと読んでいた本を閉じてベアトに向き直ると、面白くなさそうにベアトは唇をとがらせた。
そして話題を転換しようと手のチョコを差し出す。
「それよりもォ、妾の愛を受け取れよォ。」
ぐりぐりと、私の頬に板チョコが押し付けられる。
「い、いた!痛いです溶けてます!」
一通り私がさわぐとベアトは満足したのか、豪快に笑いながら椅子に腰掛けた。
はあ、もう。全くこの子は。
「剥き出しの板チョコでなくて、こんな時には手作りのものを渡すべきじゃないんですか?」
それを指摘すると、ベアトは居心地が悪そうにずるずると椅子から滑り落ちる。
テーブルが胸の辺りまできたところで、止まった。はしたないですよ。
「…い、一応作ってみたんだけどな?その、…なかな湯煎とかいうやつが上手くいかなくての…?」
「要は失敗したんですね。」
「う゛!」
図星だ、と表情で語ってくれた。そしてなにかもごもご、呟いてポケットからサイコロより一回り大きいくらいの箱を取り出す。
包装もとても綺麗にできてるとはいえない。だが、それが頑張って作ったんだと物語っている。
本当に、分かりやすいんだから。
「一つだけ…上手くできたんだ。…味は保障できないけどな。」
「…魔法を使わず自分で作ってくれたということだけで、十分ですよ。それだけで美味しく感じられます。」
こんなにも粗暴な振る舞いのベアトの、心の奥底の優しい部分が良く出ている。
箱を開けてみると、小さな不恰好のトリュフだった。
自分にはこの包装は過ぎていると言わんばかりに真ん中でちょこんと佇んでいる。
「…嬉しいですよ。」
「…お、おおお、当たり前だ!なんてったって妾が作ってやったんだからな!」
真っ赤に照れてどもるベアトに、くすりと笑みが零れる。
「お返しを、渡さなくてはいけませんね。」
そう言うとベアトの頭上に?が浮かんで、首を傾げた。
そんなベアトに、触れるだけのキスを贈る。
チョコレートキッス!
(私のお返しは、これです。)
(…〜〜ッ!ッ!!)
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ネタ切れしそうです
*バレンタインフリーでした。現在はフリーではありません。*
20100220 のあ初季
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