猫の足跡一つついていない真っ白の雪野原を、軽い足取りで歩いていく。
むこうの山にはとても濃い霧がかかっていて、まるで現実から浮いているようだった。
木々も綿のような花を咲かせ、どこかの絵本の世界へ迷い込んだような錯覚を覚える。
「こらこら名前、あまりはしゃぐと危ないですよ。」
「ワルギリア様も来れば良いのに。私の洋服貸してあげますよ。」
テラスのチェアに座って雪景色を眺めているワルギリア様を手招く。
だけど微笑むだけで、動こうとはしない。
「もう歳ですので、あまり激しい運動は出来ないのですよ。」
「うそつけ、この前ガァプと遊んでたじゃないですか!」
絶対寒いからめんどくさいだけだな、ちくしょう。
こうなったら…
「っしゃあああ!!」
「なっ!?」
思いっきり雪球を投げる。あ、命中。
頭から雪を被ったワルギリア様が立ち上がった。そして指を鳴らすと、テラス前の雪が玉になって浮かび上がって…え?
「きゃああごめんなさあああい!!」
それが一斉に襲ってきた。そしてぼすぼすと逃げ回る私の背中に命中し、弾ける。
そして転んだ私のところへ、ワルギリア様がドレスの裾を掴んで上げずんずんと迫ってきた。
「…ムキになり過ぎです。だからガァプにもからかわれるんですよ。」
「…まだ懲りないみたいですね。」
立ち上がって雪を払っている私に影がかかる。曇ったのかと思って空を見ると、そこには大きな雲…ではない。雪の塊が浮遊していた。
「…は?」
「師匠をからかうと痛い目を見ることになるのですよ。」
ワルギリア様に視線を戻すと、ワルギリア様は満面の笑みで笑ってやがる!
「ぴゃあああああ」
くそ、やられた!
大変な目に遭った。
結局雪に埋まった私はびしょびしょになった服を着替えて、今現在ロノウェお手製ココアを飲んでいる。
「いくらなんでもやり過ぎですよぅ…。」
ココアをすすりながら、大げさに拗ねてみせた。
するとワルギリア様はしゅんと小さくなって、すみませんと言う。
ワルギリア様が私の頭をタオルで拭いてくれている間、心地良い揺れに身を任せて暫く目を閉じる。
「…名前?寝てしまったのですか?」
「…」
なんとなく答えないで黙って居ると、首に何かが巻きついた。あたたかい、お師匠様のうで。
「おやすみなさい、名前。」
ゆきあそび
全部、分かってますよ。怒ったふりしてじゃれて遊んでくれたんですよね。少しやりすぎだったけども。あなたのような優しい師をもてて、私は幸せです。
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雪ふったよ記念(遅)
20100213 のあ初季
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