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「わはー!嘉音くんにだーいぶ!」

「…っ」


どす、と。
思いっきり鈍い音がした。

僕はよろけて、腰にくっついている名前を引き剥がした。

「いつも言ってるだろ。仕事の邪魔しないでくれ。」

「ああーん、嘉音くんの腰!触らせて!!」

引き離されてもなおじたばたと腰にくっつこうとする名前。呆れてため息をした。

もうこの変態には慣れた。だから今更騒ぎはしない。

「大体持ち場の掃除はどうしたんだよ?」

「おわった!」

にへ、と能天気な笑顔を浮かべて名前は言った。掃除を任されてから数十分。

相変わらず名前は優秀みたいだ。手が器用な上に作業が早いから使用人としての能力はとても高い。

そんな名前にいつも僕は嫉妬してばかりだ。

「とにかく…僕はまだ終わってないんだ。どこか行っててよ。」

「じゃあー、嘉音くんの手伝う!」

「えっ…」

僕が持っていた雑巾をひったくって、名前は掃除をはじめた。

どうせ言っても聞かないのだろうと、僕は僕で新しい雑巾を取り出してそうじを再開する。

隣の窓を拭いている名前をちらりと見ると、楽しそうに鼻歌を歌っていた。

「今日いいおてんきー。あとで奥様にお願いして紗音と三人でお茶しにいこう!」

「…あいにく僕にそんな暇はないから。」

「がっ、がびーん!!」

べちゃっと(名前が口で言った)効果音と共に雑巾が落ちる。

僕はまたため息を吐いて雑巾を拾った。

「そ、それだけを楽しみに今日を頑張ってきたのに!!」

「…雑巾。」

「あ、ありがと…で、なに!?なにがあるの!?私を差し置いてなにをするの!?」

雑巾を受け取ると堰を切ったようにぎゃあぎゃあと喚き始める。

通りかかった姉さんが「ほんとに二人は仲がいいのねー」とか言ってたけどそれは誤解だ。間違いだ。

名前が一方的に僕にまとわりついてくるだけで、僕は振り回されてるんだ。

「ううううぅ…お姉さんかなしいよお…。」

「お姉さんて…一ヶ月しか違わないだろ。」

「悲しい!!悲しいのとにかく!ほら泣いちゃうよ!!」

「うるさいな…分かったよ。そのかわり薔薇庭園の手入れと見回り、手伝ってよね。」


ああ、それを迷惑だといえない僕もぼくだけど。






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やっつけ!

20100125 のあ初季

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あきゅろす。
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