RE! 間違い探し(10年後スクザン) 雨が降るまえの湿っぽい独特な空気は、スクアーロを苦しめる。 重い。 こめかみを押さえ鈍痛をこらえる。こんな天気の日、ときどき頭痛がするのだ。ひどい痛みではないが、半日も長引けば嫌気がさす。 「…うぉ゛…い…」 何も考えずにフラフラと歩く。目的地と思われる場所に着いたとき、あ、と我にかえる。 そこはXANXUSの自室前。 この感覚は…似てる…、 …似て……い…る? いや、これよりも、酷い痛みだった。 …あの感覚は… 【間違い探し】 あの時も、何も考えずにXANXUSが居るはずのこの部屋まで、何度も訪れていた。 部屋の主はいない、と、わかっていても。 訪れては閉ざされた扉にもたれ、そのままズルリとしゃがみこみ、何もせずにうずくまって、両手で自分の肩をぎゅぅと抱く。 氷の中ので眠らされるXANXUSのことで頭がいっぱいで。何度も何度も目覚めることのないお前のところまで行き、叫んだ。なぜなんだ、と。 苦しい。 決して破られることのない、俺とお前の間の壁に何度も何度も爪をたて、愛してるんだ、と。 く る し い。 しかし、その声は届きはしない。 その内、目に見えるぐらいまでにまいった俺は、上層部からXANXUSが眠っている部屋への立ち入りを禁じられた。 また、引き離された… 「… る し … い」 自分の肩を抱く手に力がはいる。 XANXUSの存在を感じていたい一心で、こうしてXANXUSの自室を訪れる。 あぁこのままでは進歩がないだろ、と自分に言い聞かせ、重い頭を持ち上げ、立ち上がる。 人の気配など微塵もない部屋に向かい、行ってくる、と告げてその場をあとにする。 そんなことの繰り返し。 あの時の自分は本当に生きた心地がしなかった。慕うべきひとを、守るべきひとを、…愛してるひとを、苦しみの渦から引っぱりだせない無力な自分に、吐き気がした。 昔のことを思い出していたスクアーロは大きく息を吸うと、見慣れた扉を勢いよく開いた。 「XANXUS!いるだろぉ!」 さっきまで曇っていた空は雨になり、部屋の窓を軽やかに叩いている。 「…なんつー入り方だ」 椅子に座っているXANXUSは窓の外を眺めながら、来ると思った、と鼻で笑う。スクアーロはそばまで駆け寄り、XANXUSをぎゅぅと抱きしめた。 「少しだけこうさせてくれぇ。」 XANXUSのさらりとした髪に頬をすりよせると、なんだか安心する。もう、いなくならないでくれ、そのために俺は強くなったんだと心から思う。 「この天気で、あた…」 「"この天気で頭が痛くて気付いたら俺の部屋まで来てて、あと心なしか吐き気もする"…だろ」 と言い当てられ、そうだぁ、と、嬉しそうに答える。 「毎回毎回、お前も飽きねぇな、その言い訳。かっ消す気力も出ねぇ」 「それは、ありがてぇ」 お前は馬鹿だと、そっと背中にXANXUSの腕がまわってきた。 あぁ、この温もりがあの時との違い。 手をのばすと触れることができる温もり。 「XANXUSー」 「あぁ?」 「好きだぁー…」 「……ほざいてろ。」 もう二度と離しはしない。 離れられない。 この温もりはふたりの体温がなくなっても、ずっとつづいていくものなのだから。 ----- ボス視点も書きたいなぁ やっぱりゆりかごの話は一度は書きたいとおもいますね。 雨が降るような天気のときは毎回同じ言い訳してボスに存分に甘えるススクアーロ´ω` ボスもいつか甘えてほしいなぁ 090219 [*前へ][次へ#] [戻る] |