とある執務官の仕事場事情(第2子パロ) ※第2子パロです。 ※プレオは3歳。 ※1%にも満たないスバティア 几帳面に分けられたいくつものフォルダの中にある、一枚の画像を表示したまま、スクリーンは動かない。 そのスクリーンの目の前に座る私の上司は、両肘をついて嬉しそうにその画像を見ている。二十分ほど。 今私はとある事件のため合同捜査として一時的にフェイトさんと一緒に仕事をしているのだ。 そろそろ昼休みが終わる時間なので、楽しそうなところ悪いが、声をかけた。 「…フェイトさん、休憩時間終わりますよ」 「あっ、ティアナ。もうそんな時間?」 「はい。…ずっと同じ写真見て飽きないんですか?」 「え?飽きないよ?」 写真に映っていたのは、上司の愛娘たちと愛妻が笑っている幸せそうな写真。 同じような写真がフォルダの中にどれだけ入っているのか想像もつかない。 私たちの様子を見ていたシャーリーさんが声をかけた。 「プレオちゃんはいくつになったんですか?」 「今年で三歳になったんだ。年々顔と性格がなのはに似てくるんだよー。まあ、なのはに比べて人見知りなところがあるんだけど」 困ったように笑っているも、果てしなくだらしない顔になっているフェイトさん。 私はプレオとはもう何度も会っている。 フェイトさんの言うとおり、やはり人見知りで、会うと壁や両親の陰に隠れてしまう。 それでも、話しているうちに慣れてくると、無邪気な笑顔を見せてくれるのでとても可愛い。 この前スバルと遊びに行ったときも、庭で元気いっぱいに水遊びをしていた。もっとも、精神年齢の低いスバルが相手だからかもしれないけど。 「フェイトさん、長期出張多くてプレオに全然会えないから寂しいですよね」 「あれ、ティアナ知らないの?フェイトさんほぼ毎日モニターで通信してるよ?」 「…え?」 「最低でも一日三回くらいは」 「シャ、シャーリーっ」 「……」 てっきり会えない寂しさから時間を忘れるほど写真に見入っていたと思っていたのに。 私のいたわりを返して欲しい。 「だから頼んでおいた書類の提出がいつもギリギリなんですか?」 「うぅ…その、遅れないようには心がけて…」 「てっきり家族に会えない寂しさから仕事に身が入らないと思って寛容に見てたのに…暇じゃないんですから余裕持って提出してください!」 「…ごめんなさい」 「出来のいい補佐役がいてくれて楽だなあー」 現場では凛として、迅速に事件を解決する敏腕執務官が、本当は部下に注意されるほど親バカだとは、彼女に憧れている局員たちは全く想像もできないだろう。 「…というかシャーリーさん、暢気なこと言ってないで何とかしてくださいよ。私が補佐官やってるときも言いましたがどうしてこうなるまで放っておいたんですか」 「いや、私に何とかできるレベルの問題じゃないからティアナがいるんだよ?」 「え、私の存在意義ってそんなのなんですか」 「あ、間違えた。ティアナの究極の執務官への道の手助けだと思って…」 「もう結構です」 どんどんその“究極の執務官への道”が遠のいている気がするのは私だけだろうか。 そのとき、執務室に訪問を告げるピーッという音がした。 シャーリーさんが応答に向かう。 「はい、どちらさまですか」 『…す』 『ほら、もっとおっきい声じゃなきゃ聞こえないよ?』 『う…プレ、オ、です…』 「プレオ!?」 フェイトさんが目を丸くしてドアの方を振り向く。 ドアが開くとプレオを抱っこしたなのはさんがいた。 「お久しぶりですなのはさん」 「久しぶりシャーリー、お仕事中ごめんねぇ。プレオがどうしてもフェイトパパに会いたいって言うから…ほらプレオ、パパあそこにいるよ」 「パパ…っ」 「プレオ…!」 なのはさんがプレオを下ろすと、プレオはおぼつかない足取りで、フェイトさんへ歩み寄った。 フェイトさんもプレオへ近寄り、思い切り抱き上げる。 「パパっ」 「プレオよく来たねっ、またおっきくなった?」 「うんっ、パパ、くしゅぐったいっ」 「えへへ、ごめんごめん」 フェイトさんはプレオの頬や額へキスをし、プレオがくすぐったいと笑うたびに目尻を下げる。 すごくほのぼのとした空気に包まれる。 「久しぶり、ティアナ」 「お久しぶりです、なのはさん。プレオ、前に会ったときより大きくなりましたね」 「ホント、気づいたら服が小さくなってるの。だからフェイトちゃん、すぐに洋服買ってくるんだけどその量がハンパなくって」 「あー…なんとなく想像できます」 「服だけならいいんだけど、ぬいぐるみとかおもちゃもいっぱい買ってきちゃうの。そのたび怒るんだけどなかなか、ねぇ…」 「…なのはさんも大変ですね」 あのなのはさんが怒るほどなのに一向に直す気配を見せないなんて、フェイトさんの親バカも相当なものらしい。 「パパ、おしごとちゅう?」 「今は休憩中だけどね」 「あ、あのね…」 「んー?なぁに?」 「プレオ…おしごとちゅうのパパ、かっこよくてすきだよ!」 「プ、プレオ…!!」 プレオの屈託のない笑顔と純粋な言葉に、フェイトさんは感動のあまり今にも泣き出しそうだ。 が、もうじき休憩時間が終わる。 感動しているところ悪いけど、フェイトさんにはそろそろ現実に目を向けてもらわないと困る。 「じゃあ、プレオにかっこいいところを見せるためにも、この書類、ぎりぎりじゃなくて余裕持って処理してくださいね?」 「うっ…こんなにあるの…?」 「お願いしますね?」 「…はい」 これさえ終わればあとは簡単な作業だけで今日は終わりなので、親バカで涙もろい上司のためにも、残りの仕事は私が引き受けて早く帰してあげるとしましょうか。 なんて柄にもないことを思わせるこの家族は色々な意味ですごい。 だってこの家族が幸せになればなるほどこっちも幸せになるのだから。 「…ところでティアナはスバルとの幸せ家族計画はどうなってるのかな?」 「シャ、シャーリーさ…っ!?」 end あとがき 娘が仕事場に来て大喜びのフェイトさんとそんなフェイトさんに苦労してるティアナのお話でした(笑 [*前へ][次へ#] [戻る] |