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Sister(フェイト+アリシア)


気がつくといつか見た夢の、あの花畑にいた。


母さんと、アリシアがいた、あの花畑。


自分は執務官の黒を纏っている。

見渡してみても誰もいない。

風がそよそよと頬を撫でるだけ。


なぜか不思議とすぐ、これは夢なんだとわかった。
いや、わからざるをえなかったのかもしれない。


だって、この花畑だから。




「…どうしてまた、この夢をみたんだろう」




呟いても答える人はいない。

独り言が宙を舞って風に流されるよう。




「なのはも、ヴィヴィオも、誰も、いない…」




愛しい人。私のかけがえのない愛しい人たちはそこにはいない。
僅かな孤独感。




「また…私、どこかで迷ってるのかな」




夢は深層心理を表すと聞く。
悲しい記憶が刻まれたこの場所が夢に出てくるのは、きっと自分に何か負の感情が滲み出てきているからなのかもしれない。




「…フェイト」
「え…っ」




誰もいないはずのこの場所で自分以外の人の声。
とても懐かしいあの声。
呼ばれた方を振り向くと、やはり、懐かしい人が立っていた。




「アリシア…」
「フェイト、久しぶり」

私よりもうんと小さな姉が、そこに立っていた。
幼い頃の私と同じ顔をした姉。


歩み寄って、膝を付き、視線を合わせる。
目の前の姉は優しい笑顔を浮かべていた。




「大きくなったね、フェイト」
「…うん」
「元気?」
「元気、だよ」




目の前の光景に思考がついていかない。


何故君がここにいるの。





「ねぇ、フェイト、怯えてるよ」
「え…?」
「感じるよ、フェイトの心がふるえているの。何に怯えているの?」
「私の心が、ふるえている…?」




アリシアが私の胸の上に手のひらをそっと重ねる。

じわりと感じる暖かさ。
それに引き寄せられるかのように冷たいものが胸の奥から浮き上がる。



あぁ、なんだかわかった気がする。




「きっと、不安…なのかもしれない」
「何に?」
「…未来に」




六課ができて、なのはとの距離が今まで以上に近くなった。

ヴィヴィオというかけがえのない娘もできた。


“家族”に対して強い想いを抱く私にとって、二人がそばにいてくれることが、どれほど幸せなことだろうか。


でも、それは同時に、心に暗い影を落とす。




「私は…大切な二人を守れるか不安なんだ」
「…うん」
「二人とずっといっしょにいたいし、ずっと守っていきたい。けど、私は弱いから…」
「……」
「二人とも、弱い私といるより、もっと他に強くていい人といる方がいいんじゃないかなって…」
「フェイト」




静かに、それでいて凛と強く呼ぶ声。

はっと顔を上げるとアリシアは両手を私の頬に添えて真っ直ぐと瞳を見つめた。




「フェイトは強い子だよ」
「え…」
「本当の強さはね、自分の力がどうという問題じゃないの。自分以外の他の誰かを一生懸命守ろうとする力が、本当の強さなんだよ」
「……」
「ただ、その強さを少し間違うと悲しいことが起きる…あの人のように」
「…プレシア母さん…」
「でも、フェイトは違うよね?間違わないよね?」
「…うん、私は絶対に…間違わない」
「なら、大丈夫だよ」




アリシアが私の頭を両手で引き寄せ優しく抱いた。
私よりも小さく細い腕なのに、とても温かい。


思わず目から熱いものが込み上げ、零れ落ちる。


私もアリシアの背中に手を回してしっかりと抱きしめる。


夢のはずなのに、すべての感覚が本当にそこにあるみたいで、不思議だ。




「よしよし、フェイトは泣き虫なんだから」
「うん…ありがとう、アリシア」
「だって私はフェイトのお姉さんだもん」
「アリシアが…私のお姉さんでよかった」
「私も、フェイトが妹でよかったよ」




アリシアが私の額に軽くキスをして体を離す。

私と同じ紅の瞳が優しい眼差しをしている。




「私もう、あの人のところへ行かなくちゃ」
「え…」




アリシアの背後の、遠くの木の下を見ると、美しい黒を風にたなびかせる人がいる。


彼女もまた、懐かしい人。


何となく、笑顔を浮かべている気がする。




「…それじゃあ、私も行くよ。二人のもとへ」
「うん…フェイトが必要としてくれれば、また会えるからね」
「うん、またいつか」
「…じゃあ、いってらっしゃい、フェイト」




いつか見た夢のときと同じ言葉。


直後、一瞬、強い風が吹いて花びらが舞い、アリシアもともに消える。

懐かしい彼女も。





「ありがとう、またね、アリシア…母さん」




















目を覚ますと始めに目に入ってきたのは見慣れた天井だった。
窓からは朝日が射している。


額を手で触れるとあのときの感触が蘇る。




「あ、おはよう、フェイトちゃん」
「なのは…おはよう」
「…フェイトちゃん、どうしたのっ?」
「え…?」
「泣いてるよ?」




なのはが私の涙を指で掬う。
そこで初めて自分が泣いていることに気がついた。




「怖い夢でも見ちゃった…?」
「…ううん、とてもいい夢だった…とても、懐かしい夢」
「懐かしい、夢?」
「なのは…」
「なぁに?」
「守るから」
「え…うん…?」




なのはは何が何だかよくわからないといった顔をしている。

その様子に思わず笑みが込み上げ、軽くおはようのキスをした。

目をぱちくりさせるなのはに苦笑いしつつ、ベッドから降りて、すでに朝食を取り始めている愛しい娘のもとに向かう。










アリシア、この人たちが私の大切な人たちだよ。

必ず守っていくから、見守っていて欲しい。


次に会うときは笑顔で会えるように。



end




あとがき
突然アリシアの話が書きたくなったので。(´∀`)
これを期にフェイトさんがなのはさんにプロポーズをする決心をしたとかしないとか(笑

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あきゅろす。
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