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Will you marry me?(フェイなの)


六課解散が近づいてきた三月の始め。

周りの職員たちは自分の抱える仕事と同時に身の回りの整理をしなくてはならないので、いつも以上にあちらこちらとデスクの上に物が積んである。


私はというと、解散間近と言えどフォワード四人の訓練はギリギリまでやるので、そのメニューづくりに没頭していた。

大切な大切な私の教え子たち。
だから訓練は少したりとも力を抜いてはいけない。

伝えたいことはまだ山ほどある。



ふと気がつけば、他の職員たちはみな帰ってしまっていた。


軽く背伸びをしながら独り言を呟いてみる。




「あー…結構時間かかちゃったな…」
「ホント、こんな時間まで残ってるなんて」
「ふぇっ?フェイトちゃん!?いつからいたの!?」
「今来たとこだよ」




驚いて振り返れば、フェイトちゃんが苦笑いしながら立っていた。




「フェイトちゃん今日本局じゃなかったっけ?」
「そうだよ。終わってからこっちに来た」
「何か忘れもの?」
「まぁ、そんな感じ、かな…?」
「…?」




どことなく歯切れの悪い返答をするフェイトちゃんに私は首を傾げる。




「なのは、帰るでしょ?」
「え、うん、ちょうど終わったから…もしかして一緒に帰るためにこっちに寄ったの?」
「さぁ…どうだろね?」
「…?」




またしてもよくわからない返答。
とりあえず待たせてしまうのもあれなので、急いで帰り支度をして、二人でオフィスを後にした。










外に出るとまだ三月ということもあって夜風が少し肌寒く感じた。




「なのは、駐車場まで少し遠回りしたいんだけど、いいかな?」
「え、いいけど…」
「ありがとう」




そう言ってフェイトちゃんは私の手を握って歩き出す。


ちらっと見たフェイトちゃんの横顔は、何となく迷っているようにも見えた。




「なのは…四月からヴィヴィオが学校に通い始めるから忙しくなるね」
「そうだね…でもそれ以上に、やっぱり楽しみかな」
「そっか、そうだね…私も楽しみだよ」
「フェイトちゃん、は…」
「え?」
「フェイトちゃんは、どうするの…?」




私がずっと聞きたかったこと。
私とフェイトちゃんの今後。


私たちは恋仲だ。
その気持ちが揺らぐことはない。少なくとも私は。



でもフェイトちゃんは?


私と同じような気持ちでいてくれているんだろうか。

もしかしたら私の独りよがりになっていないだろうか。


四月になれば私は航空隊に戻り戦技教導、フェイトちゃんは本局に戻ってまた次元世界を飛び回るお仕事。


会える時間は確実に今以上に減ってしまう。


六課解散を控え、最近ますます、そのことで胸が苦しくなる。




「…今日はそのことでなのはに話があるんだ」
「え…」




フェイトちゃんは立ち止まって私と向かい合った。


その声はどことなく固かった。


ここから先、何が告げられるのか、怖くてちゃんとフェイトちゃんの顔が見れない。




別れよう。
区切りをつけたい。
もう好きじゃない。




そんな言葉がその口から告げられるんじゃないだろうか。


そう思うと怖くて不安で顔を俯けた。




「なのは…?」
「……っ」
「こっち、向いて」
「やだ…」
「え…」
「私、フェイトちゃんと離れたくない…!」
「…!」
「フェイトちゃんとずっと、一緒にいたいよ…!」




私の瞳には涙が溢れ、声は震えていた。


胸の前で制服をぎゅっと握りしめる。







しかし、次の瞬間、私はぐっと引き寄せられてフェイトちゃんに抱きしめられいた。




「え…!?」
「もう、なのはに先に越されちゃったな」
「フェイト、ちゃん…?」
「…私も…なのはとずっと一緒にいたいよ」




聞こえてきたフェイトちゃんの声はさっきまでの固い声ではなく、いつものように優しい声だった。




「…一緒に暮らそう、なのは」
「え…っ」
「もちろんヴィヴィオも。三人で」
「フェイト、ちゃん…」




フェイトちゃんは少し私の体を離して、自分のポケットから小さな箱を取り出した。


誰が見ても何が入っているのかわかる、ビロード張りの小さな箱。


フェイトちゃんは蓋開けて中に収まっているそれを私に見せた。






「楽しいことも、悲しいことも、これから起こる全てのことを三人でわかちあっていこう」
「……っ」
「私がずっと守っていくから」
「うん…っ」
「これからもなのはを愛し続ける」
「うん…っ」
「私と、結婚してください」
「…はい…!」






私は思いっきりフェイトちゃんの首に腕をまわして抱きついた。


さっきまで悲しい涙だったそれはより一層大粒になって嬉し涙へと変わった。




「…ねぇ、それはめてくれる?」
「うん…なのは、手だして」




私が左手を差し出すと、フェイトちゃんは愛おしそうに撫でてくれた。


そうして、シンプルなデザインで銀色に輝くそれを薬指にゆっくりと嵌める。



サイズもぴったりでしっかりと収まったそれになんだかくすぐったさを感じた。




「ふふっ、早く帰ってヴィヴィオに教えてあげなきゃ。春になっても三人で暮らせるよって」
「そうだね。それに新居も探し始めないと」
「なんだかやらなきゃいけないことがいきなり増えちゃったねーフェイトちゃん」
「でも…嫌じゃないよね?」
「もちろんっ」









ぎゅっと絡めた指が温かい。



体全身から幸せが滲み出てくるよう。



黒い制服に包まれたその肩に顔をこすりつければ、頬を優しく撫でてくれる。



顔を上げると目の前にはいつも通りの優しい、紅い瞳。





「愛してるよ、なのは」
「私も、愛してる、フェイトちゃん」





そっと重ねられた唇から、愛しさと嬉しさが溢れ出てくるようだった。





end




あとがき
前から書きたかったフェイなのプロポーズ話です。(^-^)
時期が解散直前なのは、ギリギリまでフェイトさんが意気地なしだったかr(ry

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あきゅろす。
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