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ブラックアウト(アリすず)


カーテン越しに聞こえる、窓に強く当たる無数の雨粒の音が少しうるさい。
外では強い雨風とひっきりなしに雷が鳴り響いている。


二人で寝るには十分すぎるほど広いベッドの上で雑誌を読んでいると、ソファーで同じように小説を読んでいたすずかが手に持つそれをパタンと閉じた。



「雨、すごいね」
「ホント、昼間はあんなに晴れていたのに」
「でもおかげでアリサちゃんが泊まっていってくれることになったから私は嬉しいな」
「っ…そう」



もともとすずかの家には泊まるつもりで来たわけではなかったけど、外があんな調子だから結果的に泊まることになった。

嬉しいのはすずかだけじゃなくて、私だってそうだ。



「アリサちゃん、何か温かいもの飲む?」
「…そうね、貰おうかしら」
「じゃあ紅茶頼んでくるね」



そう言って立ち上がって扉に近づいたそのとき。




眩しい閃光が一瞬走る。


叩きつけるような雷の轟音。


次の瞬間には部屋が真っ暗になっていた。



「きゃっ!?」
「すずかっ!?」


すずかの上げた悲鳴に私は瞬時に体を起こした。



「…大丈夫、ちょっとびっくりしただけ」
「そう…」
「…ねぇ、アリサちゃんのとこに行ってもいい?」
「えぇっ!?」



部屋の中は真っ暗で何も見えない。
下手に動いて転んだりしたら大変だ。



「く、暗いからじっとしてなさいっ」
「アリサちゃんのそばに行きたいな」
「なっ…」
「だめ…?」
「…足元気をつけなさいよ」



私がすずかの頼みを断りきれるはずがない。


情けない自分に思わずため息が出る。



「アリサちゃん、ベッドのとこにいるよね?」
「そうよ」
「私の名前読んでくれないかな?」
「…はい?」
「声出してくれると方向わかりやすいでしょう?」
「……」



理屈はわかるけどなんだって名前なのよ。恥ずかしいったらないわ。


でもすずかの“おねがい”に逆らえるわけもなく。




「すずか」
「うん」



ゆっくり近づく足音。



「すずか」
「アリサちゃん」



それはだんだんと大きくなって。



「すずか」
「アリサちゃん、みつけた」



声のする方へ腕を伸ばす。
両手を握られかと思うと、すぐに首に手を回して抱きついてきた。



「えへへ、とうちゃーく」
「まったく、あんたって子は…」


声さえ聞けば呆れているようだけれど、顔はきっと綻んでしまっている。
真っ暗で良かった。



「アリサちゃん、寂しかった?」
「べ、別に…すずかこそどうなのよっ」
「私は…すっごく寂しかったよ」



すずかは私の首に顔を擦り寄せた。
私もすずかの細い腰に腕を回す。



「…ほんのちょっとじゃない」
「ほんのちょっとでもアリサちゃんがいないと寂しくなっちゃうくらい、アリサちゃんが大好きなんだもの」
「…っ!」



まったくこの子ときたら。


躊躇うことなく恥ずかしい言葉をぶつけてくるから何も言えなくなってしまったではないか。




少し体を離して目の前すずかの頬を両手で包み込むと、ふふふと嬉しそうな小さな笑い声がした。


暗くてよく見えないけど、どんな顔をしているかは容易に想像がつく。
いたずらっ子のような笑顔。



親指でゆっくり唇をなぞると、また楽しそうに息がもれた。



「場所、わかる?」
「わかるわよ、すずかのことは何でも」
「本当?」
「甘く見られちゃ困るわ」




私だって負けないくらい、すずかのことが大好きなんだから。




唇をそのまま押し付けるようにキスをして、二人でベッドに倒れ込んだ。





「(停電、まだ復旧しませんように…)」



暗闇の中での甘い快感に、本能のままにおもむきながら、とろけそうな脳みその片隅でそんなことだけ考えていた。





end




あとがき
新居での初ブレーカーが落ちた記念に書きましたさすが20アンペア…orz
しかしアリすずは明るくても暗くてもいちゃいちゃできますね!(何

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あきゅろす。
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