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father(180000hit記念SS・第2子パロ)


※第2子パロです。
※プレオ産まれてません
※ほとんどフェイトさんと士郎さんのお話です
※無駄に長い


















第97管理外世界極東地区、現地惑星名称「地球」。
陸上国家「日本」関東地区に位置する小さな街、海鳴市藤見町。

海の見える、小さな街。

そして、なのはが育った、大切な街。



私となのは、そしてヴィヴィオは久しぶりにこの街へ帰ってきた。

行き先はなのはの実家。
目的は、新しい家族を授かったことの報告。




「私、高町なのはは、新しい命を授かりました!」




偶然にも恭也さんたちも帰ってきていて、高町家全員に直に報告することができた。
なのはの言葉に、最初はみんな驚いていたけど、すぐに祝福の言葉をかけてくれた。


嬉しそうに経緯を話すなのはやヴィヴィオに対して、私は極度の緊張でうまく話せない。



「…さて畏まった話はこれくらいにしましょうか。今日はご馳走つくらなきゃ!」
「あっ、じゃあ私も手伝う」




桃子さんが手のひらをぱちんっと合わせて立ち上がる。
嬉しそうに台所に向かう桃子さんを美由希さんが、これまた嬉しそうに後を追う。

恭也さんは「なら俺はお祝いのケーキでもつくるかな」と言って席を立った。


それぞれがその場を離れ、報告という仕事を一旦終えた私は、少し肩の荷が下り、緊張が和らぐ。
安心して小さく息を吐いた、その時だった。




「…フェイトちゃん、少し庭に出ないかい」
「え、はっ…はい!」




士郎さんが私に声をかける。その声はいつにもなく(普段はとても陽気なのに)真剣で、突然のことで私は思わず声が上擦ってしまった。




「…お父さん?」
「フェイトちゃんをちょっと借りるよ。なのはは家でゆっくりしててもいいし、なんならヴィヴィオと買い物にでも行ってきたらどうだ?」
「なのはママ!私、お買い物行きたい!」
「えー?んー…じゃあせっかくだし、行こっか?」
「わぁいっ、やったっ」




ヴィヴィオのお願いにたじたじのなのはは買い物に渋々行くことにした。
無邪気な笑顔を浮かべるヴィヴィオを優しい眼差しで見つめる士郎さんは「行こうか」と私に短く声をかけた。

私もおどおどしながら士郎さんの後をついていく。







庭に出ると、少し湿ったような風が頬を撫でた。日本ではそろそろ梅雨の時期だ。

懐かしいにおいと風景だが、味わっている余裕は今の私にはない。

結婚相手の父親と二人きりなんて緊張しないわけがないじゃないか。

それが、相手が士郎さんでも。
いや、むしろ士郎さんだからなのかもしれない。




「久しぶりだなあ、フェイトちゃんと二人きりで話すなんて」
「…あ、えと、そうです、ね…」
「どうかしたのかい?」




私の落ち着きのなさに、士郎さんが怪訝そうな顔をする。
私には聞かずにはいられないことがあった。




「士郎さんは…その…私のこと怒ってないん、ですか…?」
「…怒る?」
「えっと…今さら、ですけど…私がなのはを、その、士郎さんたちのもとから連れていってしまったようなものだし…」




なのはは元々こちらの世界の人間だ。
士郎さんたちからしてみれば、私がなのはを自分たちの知らない世界へ連れていってしまった、そう思われてもしかたがない。

私となのは別々の世界の人間。
交わってはいけない二人だったのかもしれない。


なのはとの結婚を報告するときも同じようなことを考えた。

情けないことだが、それを士郎さんに伝える勇気はその時の私にはなかった。




「…確かに、なのはは普通にここで育って、普通に結婚して、普通に子どもができるんだと…思っていたし、願っていたよ。あの子が小さい頃からずっと…それがあの子が幸せになると思っていたからだ」
「……」
「でもね、それ以上に幸せになれる道を、君がくれたんだよ」
「え…」




私の言葉を静かに聞いていた士郎さんは一呼吸置いてから、ひどく優しい声で語りはじめた。
私はじっと次の言葉を待つ。




「なのはがなのはらしく生きられる道。私たちが思い描いていた普通の幸せなんかよりずっと幸せになれる道さ」
「なのは、らしく…」
「君に出会う前のなのはは…私たちの前では見せなかったが、自分の夢がみつからないことに対して焦りを感じていた。年齢のわりによく考える子だったからね」
「はい…」
「でも魔法に、君に出会ってから。なのはは見違えるように生き生きした表情を見せてくれるようになったんだ…私たちにはできなかったことだ」
「士郎さん…」




思ってもみなかった言葉に、目頭に熱いものがこみ上げてくる。
まさか感謝されるだなんて。




「おいおいっ泣かないでくれよ。私がなのはに怒られてしまうじゃないか」
「ごっ、ごめんなさいっ」
「…それにね、君はふたりの孫まで与えてくれたじゃないか」




ヴィヴィオと今なのはのお腹の中にいる新しい家族。
来年には会えるであろう家族。




「私は、なのはたちを幸せにしてあげられるでしょうか」
「……」




親になってからこう言うのも何だが、私には幸せにできる自信があまり無い。

理想的な親のヴィジュアルを思い浮かべたとき、自分がどうするべきなのかがぼやけてしまう。




「私には父親はいませんでしたし…母も…いい親になれる自信が、正直がありません…」
「…君なら大丈夫さ」
「え…」
「そういう経験をした君なら、家族を不幸にしたりしない。私はそう思う」
「……」
「それに、一人で背負おうとしないでくれ。なのはや、周りの人を頼りなさい。忘れては困るが君だって私たちの娘なんだ」
「士、郎…さん…!」




士郎さんの大きく温かな手が私の頭を撫でる。
私の目から堪えきれなかった大粒の涙が頬をつたっていく。
この人はなのはだけじゃなく、私のこともこんなにも想っていてくれたんだ。




「私…っ必ずなのはを、子どもたちを…大切な家族を幸せにします!」
「ああ、なのはを、私たちの可愛い孫たちを頼んだよ」
「はい…!」




涙を拭って、いまだ優しい眼差しで私の顔を覗き込んでいる士郎さんに、力強く答える。
士郎さんは髪の毛がくしゃくしゃになるほど私の頭を撫で、嬉しそうに笑った。

これが父親なんだ。




「フェイトちゃーん、お父さーん!ご飯できたよー!」




いつまでも庭から戻って来ない私たちに痺れを切らせたのか、なのはが大きな声で呼んでいる。




「…なのはたちには今日のこと内緒だぞ?」
「え?」
「この歳になっても熱心にこんな話する親ばかなんて知られちゃ、父親の威厳が、ね…」
「そんなことないと思いますけど…」
「正直恥ずかしいんだけどね…頼むよ、お父さんとの約束だよ?」
「ふふっ…はい」




私と士郎さんは顔を見合わせて笑い合いながら中へ戻る。
そんな私たちの様子を見て、なのはは怪訝そうな顔をした。




「お父さんと何のお話してたの?」
「…内緒、だよ」
「えーっ、ヴィヴィオも気になるー」
「ほらほらご飯なんでしょ?行くよー」









大切な家族を幸せにする。
私ができることから、この手で必ず。


愛しい人の父との誓いを胸に。


桜の舞う季節に出会える、新しい家族のためにも。



end




あとがき
無駄に長くなってしまいました(^-^;)
ほとんどフェイトさんと士郎さんの会話だけですが、ずっと思い描いていた場面なのですがやっと書けました(*^_^*)
こうしてフェイトパパの嫁娘溺愛度が加速していくのでしたという話ですww(違

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