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シャングリラ(宮ゆの)
一週間前、私はゆのに想いを伝えた。
隠しきれなくなった親友以上の情念。

私は正直、受け入れてもらえないのを覚悟していた。


だってこの想いは親友の私が持ってはいけないものだから。



でも、ゆのは目に涙を溜めて「うん」と笑顔で答えてくれたのだ。


両想いだったのがわかって、晴れて恋人となれた私とゆの。





今は、夕食をゆのの部屋で一緒に食べ終え、食後の休憩にまったりとした時間を過ごしている。


私が後ろからゆのの体を包み込んで、ぎゅっと密着すると、ゆのは少し恥ずかしそうにした。



「…ゆのっちー」
「なぁに、宮ちゃん?」
「可愛いですなぁ、ゆのっちはー」
「ふぇっ?も、もう宮ちゃんてばっ」




自然と目尻が下がるのがわかる。


仕方がない。だってこれ以上ないと言うほどの幸せを噛みしめているのだから。



ゆのの顎に手を添えてこちらに向かせると、ほんのり朱に染めた頬と形の良い桜色の唇に目を奪われた。


瞬時にある衝動に駆られた。




キスがしたい。



自然とゆのの顔に自分の顔を近づける。


「ゆの…」
「宮、ちゃ…やっぱりだめっ!」
「へ?」

残り数センチのところでゆのの小さな両手が私の顔を覆った。



「ゆのっ、ち?」
「あっ、ごめんっ」


動揺をなんとか隠しながら、様子を窺うように呼びかけると、ゆのは慌てて手を退かした。



「ごめん、嫌だった…?」
「違うのっ、嫌じゃないの…私がいけないのっ!宮ちゃんは悪くないのっ」



とりあえず二人とも落ち着かせるために、顔の前でぶんぶん振り続けるゆのの手をそっと握って動作を止める。



「…あのね、その、私でいいのかなって…」
「何が?」
「宮ちゃんの恋人が、私なんかでいいのかなって思ったの…」



絞り出すように発せられるゆのの声。


それを聞いた途端、ゆのがガラス細工のように繊細で壊れやすそうに見えて、抱きしめずにいられなかった。




腕の中のゆのは言葉を続ける。



「私は宮ちゃんみたいに絵は上手くないし、運動神経も良くないし、ス、スタイルだって…だから、ね…」
「…ゆの」



止めなければ言い続けてしまうであろう勢いの言葉を遮る。

ゆのの横の髪をかきあげて指を通すと、くすぐったそうに身を捩った。




「不安になっちゃったんだね」
「えと、うん…」
「全くー…ダメだなぁゆのさんは」
「ふぇ!?ダ、ダメ!?」
「だって全然わかってないんだもん」



耳元に口を寄せるとゆのの体が微かに震えた。


顔は既に真っ赤になっている。



「私はねー、ゆののことを考えると夜も寝られないんだよ?」
「え?み、宮ちゃんが!?」
「うん、そう。それほど大好きなんだよ、ゆのの事が」
「…っ!」



朱に染まった頬はさらに朱が深み、くりっとした可愛い目を大きく開かせた。




「ゆのといると私、ホント幸せな気持ちになんの。ゆのは私といて幸せじゃない?」
「ううんっ幸せだよ!すごく!」
「へへっ…あとね、不安になったらいくらだって私に甘えてもいいんだよ?沢山泣いたっていい。喜んで受けとめるから」
「宮ちゃん…」
「たまに私がだめになっちゃったら、ゆのは受けとめてくれるかな?」
「もちろんだよ!」
「ありがと。だからゆの、笑って?笑ってる顔が見たいんだ」
「…うん!」




やっと見せてくれた、ずっと見たかった、温かい笑顔。

それは、小さな花が咲いたような可愛らしい笑顔。



おでこをこつんとくっつけて、鼻先を擦り合わせると、お互いの笑う息がかかってくすぐったい。



それから両手でそっとゆのの顔を包む。


ゆのは先ほどのように拒むことなくゆっくりと目を閉じる。


よく見ると、睫がわずかに震えていた。

思わず苦笑いが出てしまう。

本当に彼女の動作ひとつひとつが愛おしくて仕方がない。



安心させるようにゆっくりと頬を撫でて、そっと口付けた。


短かったけれど、柔らかい感触と甘い空気でもう充分だった。



唇を離した彼女の顔は初めて見るくらい真っ赤になっている。





「…これからもずっと、一緒に、宮ちゃんとこうしてたいな…」
「…あーあ、ホーント可愛いよ、ゆのっちは」
「え、えっ!?」
「絶対、大丈夫だよ」
「…うん!」






(まっすぐな道で転んだとしても、君の手を引っ張って離さない、大丈夫さ。)




end




あとがき
初宮ゆのSSです(^-^)
宮ちゃんがたまにゆのっち呼びからゆのって呼び捨てするのが好きなので連発させてしまいました(笑
ちなみにチャットなモンチーさんの曲が元ネタです。
…何か曲の雰囲気全然出せてませんがorz

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あきゅろす。
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