グーテンモルゲン!(ゲルトマン) 「おい、起床時間だ、起きろハルトマン」 ゲルトルートがいつものように起こしに行くと、いつものように部屋は散らかり放題で、いつものようにベッドの脇の床にエーリカがシーツにくるまり寝ていた。 「んー…あとちょっとー…あと七十分ー…」 「そんなちょっとがどこにあるか!」 「じゃ、あと九十分だけー…」 「延びてる!いいから起きろ!」 「…トゥルーデのケチ」 無理やりシーツを引き剥がされたエーリカは、不満そうに口を尖らせる。 「今日私非番なんだからいいじゃん」 「非番でも規則正しい生活をするのは当たり前だ。それに一応だが戦闘待機中でもある!貴様それでもカールスラント軍人か!」 「充分な睡眠を取るのもカールスラント軍人の仕事ー」 「お前はもう充分すぎるくらい寝てるだろう!」 エーリカの過剰睡眠は、そのうち睫が絡まって目が開かなくなるんじゃないかとゲルトルートが本気半分に思うくらいだ。 にしてもこれが撃墜数二百五十機を叩き出しているウルトラエースなのだから驚きだ。 スコアと人格は別物だと実感させられるいい例である。 気づけばエーリカが衣服が散乱するベッドの上に丸まっていた。 いつの間に、とゲルトルートはため息をつく。 「まだ寝る気なのか、お前は」 「トゥルーデがちゅーしてくれたら起きる」 「…は?」 エーリカの突飛な提案に、ゲルトルートは目を丸くし、聞き直す。 それでもエーリカは口を突き出して、ちゅーだよちゅー、と平然と言いのける。 恥ずかしさのあまり、顔に血液が集中して熱くなる。 そんなゲルトルートを見てエーリカは面白そうにやにやしていた。 「なっ、おま、何を…っ!朝からそんなこと…!」 「今更じゃない。それにクリスにはするくせにー」 「何故知って…っじゃなくて!お前は、クリスじゃないじゃないかっ!」 「…でも私はトゥルーデの恋人でしょ?」 「……っ」 エーリカのからかい半分寂しさ半分な言い方に、胸に何か熱いものがこみ上げてくるのを感じた。 それは体中にじわりじわりと広がっていく。 「…エーリカ、もしかして、妬いているのか…?」 「…だったら、何」 エーリカはベッドの上の衣服たちに埋もれて背中を向ける。 ゲルトルートは小さく溜め息をして苦笑いを浮かべると、任務中などでは使わない、同郷の者同士や二人きりのときだけの、特別で愛しい名前を呼んだ。 「フラウ」 「…トゥルーデ」 呼ばれてひょっこり顔を出したエーリカに、ゲルトルートはそっと口付けた。 「ん…」 「…全く、しょうがないやつだよ、お前は」 「手のかかる子ほど可愛いんじゃない?」 「不本意ながらそのようだ」 「トゥルーデ…」 また目を瞑ったエーリカに再び唇を落としていく。 またこいつのペースに乗せられてしまった。 ゲルトルートは頭の片隅で、流されやすい自分に小さく呆れる。 同時に気の利いたことが出来ない鈍感な自分に情けなくもなった。 「すまんな、お前の気持ちを察せなくて…」 「ホントだよ、毎度トゥルーデ鈍すぎ」 「…すまん」 「でもそんなトゥルーデだから好きなんだけどね」 「…そうか」 二人の距離がまた近づく。 そこでゲルトルートは、はっと気がついた。 「そうじゃない!お前を起こしに来たんだ!」 「もー、なんで思い出しちゃうのー」 「エーリカ!お前わざと…!?」 「さーて、ミーナに怒られないうちに早く支度しよー」 「おい!いつも怒られに回るのは私の方じゃないか!」 ゲルトルートの不満の声を聞き流して、エーリカはてきぱきと制服に着替える。 「全く…いつもこれくらいてきぱきやってくれればいいんだがな」 「…トゥルーデの鈍感」 「え?」 「なんでもない、ほら、行こー」 「あ、ああ」 聞き取れなかった言葉が若干気になりつつも、時間も押しているので素直にエーリカに引っ張られるゲルトルート。 「(トゥルーデに構って欲しいから直す気になんて毛頭ない、なんてね)」 ゲルトルートの鈍感さ以上に素直になることが出来ない自分に、エーリカは思わず苦笑いをした。 end あとがき ストウィチ初SSです(・ω・) CP表記が色々あるので困りました。ゲルトマン、トゥーリカ、ゲーリカ、バルハル…とりあえず多数派のゲルトマンにしておきます(笑 表記はどうあれヘタレツンデレなシスコン18歳×無敵フリーダムな黒い悪魔16歳なCPには変わりないので問題なし!\(^O^)/ [*前へ][次へ#] [戻る] |