memories(180000hit記念SS・もっミーナ)
ミーティングルームに入ると、何やら賑やか声がしていた。
周りにはいくつものダンボール箱があり、その中心から笑い声が聞こえる。
「あらあら、賑やかね」
「あっ、ミーナ中佐!」
「ミーナ中佐もアルバム見ますか?」
「アルバム?」
リーネさんと宮藤さんが手にしていたいくつものアルバムを見せる。
表紙を見ると、どうやら扶桑語が書いてあるようだった。
「扶桑から送られてきそうです。芳佳ちゃんと坂本少佐のが」
「みっちゃんが送ってくれて、なら坂本さんのもと土方さんが…」
宮藤さんの話を整理すると、宮藤さんのお家で掃除をしていたらアルバムが出てきて、それを宮藤さんのお友達が海軍に輸送を頼みに行ったところ、土方兵曹がついでに基地に置き忘れていた美緒のアルバムなどの私物も一緒に送ってきた、ということらしい。
「芳佳ちっちゃーい!」
「ホントだー、可愛いもんだなぁ」
「この頃から豆狸ですわね」
「一枚でも取ってっちゃだめだよトゥルーデ?」
「だっ誰が取るか!馬鹿者!」
みんな好き放題にアルバムを見ている。
ここが最前線であることを忘れてしまいそうなくらい、なんだか微笑ましい光景だ。
「それで、少佐の私物は本人に届けたの?」
「あ、まだです!」
私の指摘にはっとした宮藤さんが近くにあったダンボールをひとつ拾い上げた。
「坂本さんの私物だから開けたりはしてないんですけど、すっかり忘れちゃってましたっ」
「えー、それにもアルバム入ってるんでしょー?見ようよー」
「なっ何言ってるんですのハルトマン中尉!少佐の私物を勝手に弄るなんて!」
「ホントは自分が見たいくせにぃ」
「ななな何を…!」
エーリカがペリーヌさんをからかう。
後ろにいるルッキーニさんも美緒のアルバムが見たくて仕方がないようだった。
「じゃあ、私が少佐に届けてきます。少佐が中身を確認してから、許可が出たら見せてもらいましょう」
「えー…」
「えーじゃないハルトマン!」
「あっ、私が届けますよ」
「宮藤さんは荷物の中身とかゆっくり見たいでしょう?気にしないで」
「あ、ありがとうございますっ。じゃあこれお願いします」
宮藤さんからダンボールを預かり、賑やかなミーティングルームを後にした。
美緒の部屋のドアをノックすると、美緒はすぐに出てきた。
「どうしたミーナ?」
「これ、扶桑からの荷物届いていたの」
「そうか、すまんな。入ってくれ」
部屋に入ると、相変わらず無駄なものが無い部屋を見て少し苦笑い。これじゃトゥルーデの部屋とそう変わらない。
「アルバムとか入っているそうよ。宮藤さんのと一緒に送られてきたの」
「ああ、本当だ。懐かしいなぁ!お、この本扶桑に置きっぱなしにしてたのか。どうりで見つからないわけだ。あとで土方に何か送ってやるか」
「…ねぇ、そのアルバム見てもいいかしら」
「もちろん、構わないぞ」
箱の中身をごそごそと弄る美緒に声をかける。
渡されたアルバムを、見たがっていたみんなに悪いかなと思いながら表紙を開いた。
そこにはセピア色の写真が綺麗に並べてあった。
写真に写る美緒はどれも幼く、あどけない表情を浮かべていた。
「これは五歳くらいの頃だな」
「ずいぶん可愛いわね」
「この歳の頃は誰だって可愛げがあるさ」
「今のあなたも十分可愛いところがあるわよ?」
「からかうな」
照れる美緒の表情が愛おしく感じた。
写真の中に写る笑顔と変わらない。昔からこんな笑顔をしていたのだ、この人は。純粋で混じりっけのない笑顔を。
この頃から魔法力が開花していたのだろうか、すでに眼帯をつけている。
写真をそっとなぞる。
直接触れられない分を、撫でるように。
「これは美緒のご家族の方が整理されてたの?」
「ああ、母がな。こういうのにまめなんだ」
「いいお母さまね」
「ああ、女性らしい人でな。ミーナのような感じだな。そうだ、機会があればぜひ会って欲しいな!」
「えっ、ええ!?」
「ミーナには心配かけてるからな、家族も感謝しているだろうし。ぜひ扶桑に遊びにでも来てくれ!私の家で盛大に歓迎するぞ!はっはっはっ!」
「…もう、心配かけてる自覚あるなら努力してください」
実家に連れて行くという行為自体に特別な意味なんて何も感じてないんだろう。この人にはいつも振り回されてばかりだ。
再びアルバムに目をやる。
笑顔のものから、真面目な顔。
試合に負けて悔しいのか竹刀を持って涙を滲ませ耐えるような顔をしているものもある。
「これが、あなたの生きてきた軌跡なのね」
「…ああ、そうだな」
「私の知らないあなたばかりだわ」
「そりゃそうさ。出会う前なんだから」
「…これから先、出会えなかった分も、あなたのそばにいたいの」
「……」
「だから死なないでね、美緒…」
私は懇願するように言葉を吐き出した。
いつも無茶ばかりする美緒。
私の心配なんかよそに、いつだって大空を自由に飛び回る。
美緒は少し黙って私の顔見ると、体を抱き寄せてぎゅっと抱きしめた。
「出会えなかった分だけでいいのか?」
「え…?」
「私は死なない。ミーナのそばにいる。これからもずっと、だ」
「…ありがとう、美緒」
そっと美緒に体を預ける。
その温もりが愛おしくてたまらない。
「…そうだ写真を撮らないか」
「今から?」
「ああ!この部隊だって立派な私の軌跡だからな。みんなで撮ろう!」
「…そうね」
「よし、じゃあ行くぞミーナ!」
無いなら、これからつくっていけばいい!
そう、いつもの笑い声とともに、変わらぬ笑顔で言う美緒。
私は、目に焼き付けるようにその姿を見つめるのだった。
end
あとがき
甘々というよりはほのぼの夫婦な感じで書いてみました(^-^)
もっさんはほっとくと死ぬ気で飛んでいってしまうのでミーナさんがしっかり捕まえてないとですね!わっしょーい!(何
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