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君よ花よ(刹この)
大切な想いを教えてくれた貴女。

貴女とまた再び結ばれたあの時から、意味も無く止まっていた私の時間は無慈悲なほどに駆け足で過ぎ去っていった。



だけど、今確かに、胸に咲き誇っているもの。




貴女への想い。










視界いっぱいに緑が広がる丘。
風が柔らかく頬を撫で、草がさわさわと擦れる音が耳に心地よく響く。



背中には一本の桜の木。
それは今満開の時期を過ぎ、綺麗な葉の緑が重なり合って絶妙な太陽光のグラデーションを演出していた。


私は読んでいた本のページが風で捲れそうになるのを、指で軽く抑える。




「…せっちゃん」



不意に、隣でうたた寝をしていたはずの彼女が私の名前を呼んだ。




「…どうなさいました?」



声のする方へ振り向くと、そこには少し不機嫌そうに頬を膨らませている顔。




「せっちゃん、うちといるより、読書してる方が楽しそう」
「そんなことありませんよ」




見当違いの考えに思わず苦笑いを浮かべる。


だって貴女の寝顔が近くにあるんです。
読書でもしていなければ心が落ち着きませんよ。



「ほんまぁ…?」
「本当です」
「そっか、なら、ええよ」




そう言ってにこっと笑う貴女。
私がその笑顔に見とれていると、私の伸ばした膝に体を擦り寄せてきたのでびっくりして「えっ」と間抜けな声を上げた。



「んー、これじゃまや」



太股の上に乗せていた、今まさに私が読んでいた本をポイッとどけ、代わりに自らの頭を乗せる。




「本なんかよりも、うちのこと見て」




そんなお嬢様に本の扱いについて抗議なんてするはずもなく、私は為されるがままだった。








目の前に現れた艶のある黒髪に目を奪われ、恐れ多くも、前髪をそっと指で撫でる。

さらさらした感触が直に伝わって、どきっと胸が大きく跳ね上がった。


お嬢様は「もっと撫でて」とでも言うかのように私の手に顔を擦り付けてくる。


その子猫のような仕草に私の頬は緩むばかり。






以前の私には想像もつかない行為である。






「…お嬢様の髪は本当にお綺麗ですね」
「えっ、ほんまっ?」
「ええ、とても」
「嬉しいなぁ、せっちゃんのために髪の手入れには気合い入れてるんよ?」
「え…?」
「うち、せっちゃんに髪の毛触ってもらうの、好きなんやもん。だからせっちゃんが触りたくなるような髪にって…」
「そのようなことを…」



せずとも、私はいつもお嬢様に触れていたいと思っています。




そう続けるはずの言葉は、私の唇に重ねられたお嬢様の唇によって飲み込まれた。






「…えへへっ、不意打ちやっ」




ゆっくりと離したお嬢様の顔は、頬に微かながら朱に染まっていた。



だがおそらく、今の私の頬はお嬢様以上に朱に染まっていることだろう。



顔に血液が集中するのが自分でもわかる。





「…私も、まだまだみたいですね」






好きです。




そう耳元で囁いて、今度は私からお嬢様に唇を重ねた。











今はまだ若葉のこの桜の木が満開になる姿を、私はあと何回、お嬢様と二人で見ることが出来るのだろうか。







奇遇にも、私の名は桜が咲くと書く。




また知っての通り、桜の花の命は短い。



“いのち短し、恋せよ乙女”という言葉があるが、私に向けて言われているような気がしてならない。





だからもし、永久というものがあるのなら、私の願いはただひとつ。


この想いを貴女の側でずっと、咲き続けていたいのです。






君よ、花よ。






end




あとがき
サクラの神曲「君よ花よ」を聴いていて刹このでもいけるんじゃないかと思って書いてみたらえらくわけわからんものが出来てしまいましたorz
内定おめでとう!\(^O^)/(何

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あきゅろす。
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