おまけ。
『王子様の言う通り!』3
「神楽さん、もう片方の靴はどうされたのですか?」
「え?あぁっ!」
「紛失の場合は弁償となりますが」
帰ってきて靴をなくしたことに気づいた神楽は顔面蒼白になりました。どこで落としたか全く覚えていないのです。
幸運なことに魔法使いの市早は優しい男だったので、一日だけ待ってもらえることになりました。
「では、見つかると良いですね」
そう言って魔法使いは去っていきました。
******
翌日、神楽はガラスの靴を探すために街に繰り出しました。
なんの手がかりもなくウロウロしていると、そばをトラックが通りかかりました。
そのトラックからスピーカーを通して声が聞こえます。神楽は耳をすましました。
『繰り返します。昨日、ガラスの靴を忘れて非常に困っている方は至急昨日のパーティー会場にお越しください』
自分のことです。
神楽は飛び上がりたい気持ちになりました。一体誰が拾ってくれたのでしょう?
『なお、無視した場合は貴方の秘密を国中に公表させていただきます。以上、高階榊様からのメッセージでした。繰り返します…』
神楽は再び顔を青くして、走ってパーティー会場へと向かいました。
「たっ……高階ぁ!」
扉の向こうでは王子様が一人で待っていました。
「おーよく来たな。延滞金は払ったか?」
「まだ……じゃなくて!俺の女装のことは、どうか内密に…」
「どうしよっかな。俺、口軽いし」
「お願い!黙っててくれたら、なんでもいたしますから…」
「……なんでも?」
王子様は意地悪い笑みを浮かべました。
「なんでもね、わかった。俺お前みたいな奴とやってみたかったこといろいろあんだよね」
「えっ?なに?」
「教えたげない」
王子様の言ってることは一つもわかりませんでしたが、神楽はなんとなく自分の人生がとんでもないものになっていく予感がしたのでした。
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