おまけ。 スターストラック編 「ただい……ま?」 バイトから帰ると、部屋が薄暗かった。 今日はあのバカな同居人が家に居るはずだ。 またあいつうたた寝でもし… 「れーいー!!」 「うわっなんだよ!?」 リビングに入った途端、例のバカが飛び付いてきた。咄嗟に身を翻すと、バカは顔面から床に倒れこんだ。 死んだのか……? 「おい、湊?」 「……玲ぃ…」 あ、生きてた。 湊が起こしてほしそうに両手を上にあげたから、俺はその手を思い切り蹴り払う。 湊は結局自力で立ち上がると、飛び付いてきた経緯を説明した。 「あのね、テレビでホラー映画観てたら怖くなっちゃってね、部屋も暗いし……そしたら玲が帰ってきたから、俺嬉しくて…」 ……黙って聞いてれば… イマイチ要領をえねぇ話だな。 「そもそもなんでホラー映画なんて観ようと思ったんだよ?」 「怖いもの見たさで…」 「部屋を暗くしたのは?」 「雰囲気出るかと思って」 「……自業自得じゃねぇかっ!!」 ありったけの力を込めて目の前のバカを殴る。 湊はまた床に倒れこんだ。大げさな奴… 「れーいー…」 寝たままで気持ち悪いくらいに甘えた声を出す湊。 「なんだよ」と返せば、予想していた通りの頼みが来た。 「怖いから今夜は一緒に寝よぉ?」 「断る」 言うと思ったけど… ぜってー下心があるに決まってる。 「お願ーい!!お化け怖いー!!」 「俺は大学生にもなってそんなこと言えるお前の方がこえーよ」 「ひ、ひどい…」 湊を無視してテーブルに座ると、急に疲れがどっと押し寄せてきた。 ねむっ… もう晩飯とか良いから早く眠りてぇ。明日も授業あるし、バイトもあるし… 「玲!!大丈夫!?具合悪いの?」 顔を上げると、バカが今にも泣きそうな顔で俺を見つめていた。 「……疲れた」 「そっか……明日はもっとスタミナつくメニューにするねっ!!とりあえず今日はこれ食べて、早く休んでねっ」 「……おー」 テーブルに並んだ晩飯と、目の前にいる湊の嬉しそうな顔を見ていたら、不思議と腹が減ってきた。 これが女だったら、すげぇ嬉しいんだけどな… なんて思いつつ、俺は箸を手にとる。 また旨いから困るんだよな… 「……大概俺も、胃袋つかまれてんだよなぁ…」 「ん?玲、何か言った?」 「言ってねーよ」 「そうだ!!玲、疲れてるんだよね?俺が体洗ってあげ…」 「死ね変態!!」 [*前へ] [戻る] |