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おまけ。
メイクビリーブ編
「ちゃ……チャンネル、変えてもいいですか?」

「……は」

自分の部屋、チカラと2人きり。チカラは自分でテレビを点けたくせに、変なことを言い出した。

チャンネルなんて、好きにすりゃあいいだろ…
つーか一番の希望は、テレビなんて消してほしい。止まらない雑音は、チカラとの甘い一時への弊害でしかないからだ。

なんて考えていると、間もなくテレビから女の叫び声がした。見ると続いて違う女の声。

『そう!!今夜は待望の『怨霊』テレビ初放送!!迫りくる呪いからあなたは逃れられるか?この後すぐ!!』

あぁ、話題になったホラー映画。今日テレビでやるのか…
チカラのセリフと表情から、単純明快な答えが出た。

「中谷、怖いのか?」

チカラのことだから、ホラー映画が苦手でもなんの違和感もない。
チカラが嫌ならもちろん消してやるけど…

「べっ別に怖くなんかないですっ!!」

ところが、チカラはムキになってリモコンをベッドの上に投げ出してしまった。

「……いいのか?中谷」

「いいです!!観ますし!!」

チカラはムッとした顔でテレビを見つめる。
まぁ、いいか…



『もう……もうやめてぇーっ!!』

耳をつんざくほどの悲鳴。
画面いっぱいに血みどろの女。
物語はまだ中盤だけど、チカラの恐怖はたぶん、限界だ。

声は上げないものの、時折体を縮こまらせている。

「中谷……泣くなよ?お前の泣き顔は、見たくねぇ」

「と……東郷先輩は、怖くないんですか?」

「別に……普通だな」

「まぁ、東郷先輩って怖いものなっ……!!」

映画の主人公が幽霊に手首を掴まれて、チカラは驚いたみたいだ。俺の服を思い切り掴んできた。

……可愛い。
興奮せずには、いられない…

主人公は幽霊に追われて逃げ場をなくしてる。張り詰めた緊張感を利用して、俺はチカラの肩をぎゅっと抱いてみた。

するとチカラも俺の方に体をすりよせてくる。

「……中谷」

「ふぇ……?」

「セックスしてぇ…」

「……はっ!?」

「もう限界だ。お前、可愛すぎる…」

「こ、この状況で何を……怖くないんですか!?」

「今はお前に対する性欲しかねぇな」

「ば……バカかあんたは!?だ、ダメですよ!!」

また『バカ』か……まぁ、怖くて勃たねぇなら仕方ねぇけど…

「……せ、んぱい」

「何だよ?」
俺はテレビ画面を見たまま応える。

「や、ヤりたくはないんですけど……今日、寝る時そばにいてくれませんか?」

「……拷問だな」

「ごめんなさい……でも、一人で寝るの……ちょっと、なんか…」

『怖い』って素直に言えないところが可愛い。横を見ると、涙目でねだるチカラの瞳があった。

……仕方ねぇな…

『添い寝はいいけど手は出すな』なんて、本当に拷問だ。
それでもこの瞳に俺は決して逆らえない。

チカラ、ホラー映画がそんなに怖いのか?
俺はお前の異常な可愛さが、一番怖いっていうのに。

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