もうちょっとメイクビリーブ
。
「たいしたことじゃないんですけど……実は…」
東郷先輩が隣に腰をおろす。
やっぱり、恥ずかしい…
「笑わないでくださいね?」
「笑わねぇよ」
「あの……電車で……ち、痴漢に遭ってしまって…」
沈黙。
東郷先輩、何か反応してくれ…
と思っていたら、先輩の低い声。
「……誰に?」
「い、いやわかんないですよ……違う駅で降りちゃったし…」
再び、沈黙。
「東郷先輩?」と呼び掛けると、また低い声が返ってきた。
「悪い……頭に、血がのぼって……そいつ許せねぇ…」
あ……暴れるの?東郷先輩いったんキレると手つけられないから、それはやめてほし…
「……先輩?」
東郷先輩が、座ったまま俺を抱き締めてくれた。
先輩の体温、あったかくて安心する…
「中谷……守ってやれなくて、ごめんな…」
東郷先輩の言葉で、また涙があふれてきた。
「お、れっ……怖くて、動けなくて……すごい、気持ち悪かったのに…」
東郷先輩は何も言わずに、優しく頭を撫でてくれる。
「やだった……なんで、あんなことするの……?」
「中谷…」
東郷先輩がより一層力を込めて抱き締めてくれた。
嬉しいけど、ちょっと痛い…
「東郷先輩、苦しい……離してください…」
「……もう離したくねぇんだよ、一瞬も…」
「でも…」
「殺してやりてぇ……そいつ……俺のチカラを…」
俺を抱き締める東郷先輩の腕も、震えていることに気がついた。
俺のために本気で怒ってくれてるのがわかる。すごく嬉しくて、安心する…
「東郷先輩…」
「ん?」
「あの、いっぱい触られて、気持ち悪かった、から…」
忘れさせてほしいです…
思い切ってそう言ったのに、東郷先輩にシカトされた。小さかったから、聞こえなかったのかな?それなら、諦めよう…
「い……やじゃ、ないのか?」
「え?」
「俺に触られるの、嫌じゃないか?」
なんでそんなこと聞くんだろう?だって、同じ触られるのでも、他の人と東郷先輩じゃ全然違うのに…
「先輩だから……嫌じゃないです…」
「……可愛すぎるんだよ、お前は…」
東郷先輩がようやく体を離してくれた。そして、ゆっくり唇を重ねてくる。
「ん…」
東郷先輩のキス、やっぱり落ち着くなぁ…
と思ったら、すぐに離れてしまった。
「東郷先輩……?」
「中谷……抱きたい。全部、忘れさせてやるから…」
俺はあまりに恥ずかしくて俯いたまま頷いた。
東郷先輩が「寝室、行くか?」と尋ねたので急いで頷く。背中絶対痛くなるし…
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