もうちょっとメイクビリーブ
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今年の夏は、灼熱だ。
「毎日暑いねぇ。夏樹くん」
「暑いですね!!黒坂先輩っ」
「……東郷先輩、開かないです…」
「貸せ。ペットボトルも開けられないなんて、可愛すぎるぞ…」
あ、バカにされた!!
「……毎日熱いねぇ。お二方」
「熱いですね!!素敵です!!」
「そ、そんなんじゃないです!!」
もう、東郷先輩が可愛いとか言うから…
それにしても本当に暑い。あまりに暑いから昼食をとる場所を屋上から図書室に変えたくらいだ。
「いやー冷房すばらしいね。冷房バンザイだよ」
黒坂先輩の言葉に夏樹が同意する。本当に仲良いな…
「……それで、熱い2人は暑い夏にどっか出かけるの?」
黒坂先輩がニヤニヤしながら俺たちに尋ねてきた。
「いや、別に……そういえば、夏樹誕生日だよな?夏樹っていうくらいだし」
「あ、はい8月です…」
「お祝いするよ!!いつにしよっか?」
「ありがとうございます……けど、東郷先輩とのデートの日程を全て決めてからでいいですよ!!」
「夏樹くんナイスフォロー」
黒坂先輩の視線に気付いて振り向くと、東郷先輩がものすごい形相で俺を睨んでいた。
夏樹にそう言われたら仕方ない。
帰り道に、東郷先輩と夏休みの話をすることにした。
「えーと……どこか、行きます?」
東郷先輩は相変わらず不機嫌そうに答える。
「……お前が行きたい場所があるなら、どこにだって連れてってやるよ」
「うーん……海とか?」
とりあえず定番だし、この学校プールないから、久々に泳ぎたいな…
「却下」
「はぁ!?」
アンタがどこだって良いって言ったんだろうが!!
理由を訊くと、信じられない答えが返ってきた。
「上半身裸でずぶ濡れになるなんて猥褻にも程がある」
……ワイセツ?どこが?
「あの、海ってそういうものじゃないですか…」
「他の奴はともかくお前がやるとエロいんだよ」
……勝手すぎるだろ!!
アンタの見方次第じゃないか!!
「とにかく、海なんか絶対行くなよ。お前の綺麗な白い肌が焼けるのも気に食わねぇ…」
「でも俺、来週紅葉に水泳教える約束してます」
「……なんだと?」
東郷先輩がギロリと俺を睨む。
怖いってば、もう…
中谷紅葉は、俺の父方の従兄弟。
東郷先輩と少し面識はあるけど、東郷先輩と子供って、やっぱり合わないみたいだ。
「まぁ……約束しちゃったし……ていうか、ご心配なく」
そう言ってみたけど、東郷先輩の顔はどんどん険しくなってく。
なんか、嫌な予感…
「……今から断れ」
「い、いやそれはちょっと…」
「じゃあ、俺も行く」
……うわぁ。
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