もうちょっとメイクビリーブ
R
コイツ、優しすぎる。
「でも、置き去りはひどくないですか?」
「お前だってひどいことされただろ?このままでいいって」
後ろ髪ひかれてるチカラを連れて、俺たちはその場を離れた。あいつらは当分目覚める気配もないし。
そしてこれまたチカラの提案で、真木を家まで送ることになった。
どこまで優しいんだホント…
「これから、俺どうなるんでしょうか?」
3人で歩いていると、真木がもっともな疑問を口にした。
そりゃあ、こんなことがあったら…
「ビビって手出さなくなるか、仕返しにイジメが酷くなるかどっちかだな」
「えー!?」
真木は相当落ち込んでる。
こいつも運が悪いというか、なんというか…
「まぁ今は無理でも、いつかはお友達できるといいね?」
チカラがニッコリと笑う。
『お友達』か…
その発想はなかったな。
「そんなん夢のまた夢ですわー」
「そんなことないよ。真木くん関西人だけあって喋り方が明るくて面白い」
「ホンマですかー?」
……やっぱチカラ、優しすぎだろ…
この優しさを誰にでも振り撒いてると思うと、ますます離したくなくなる。
コイツがいない生活なんて、ありえねぇ…
「……そういや真木、お前もうウチに来んなよ」
「えっ!?なんでですの?」
「中谷との時間が減るから」
真木が思わずチカラを見る。
チカラは顔を真っ赤にして「いや」とか「別に」とかわめいた。
「つーか元々俺は中谷に頼まれてお前を助けただけで……俺は迷惑してんだよ」
「え、えっ!?まさか、師匠の恋人って…」
「詮索すんな」
「えぇー!?ってことはタバコをやめたのも…」
「うっせーな…」
真木はその後も騒いでいたが、家の近くに着くと何度も礼を言って帰っていった。
マジで、あんだけ明るかったらなんとかなりそうだけどな…
「べ、別に良いですよ。真木くんがいても」
二人きりになった途端、チカラが呟いた。
「俺が嫌なんだよ。お前に嫌われたくねぇ」
「別に嫌わないですし……今日、わかったんです」
何がだよ?と聞くと、チカラが恥ずかしそうに下を向いた。
可愛い…
「あの、だから…」
「……中谷?」
「だから!!真木くんに、ヤキモチ妬いてただけなんです…」
東郷先輩は、俺だけのヒーローでいてほしかったから…
そう言うとチカラは顔を手で覆った。
「……お前、それ犯罪…」
「えっ犯罪!?」
チカラが、俺のために妬いてたなんて。『俺だけのヒーローでいてほしかった』なんて。
嬉しすぎて、頭がおかしくなる…
じゃあ最近俺を避けてたのも、今日のことも、全部スネてただけってことか?
可愛すぎるだろ、そんなの…
「……中谷」
「はい?」
「ヤりてぇ」
「は!?」
今すぐチカラの体を抱きたい。
ヤキモチなんか妬く間もないくらい、俺で満たしてやりてぇ…
「嫌です……っていうか、二人ともケガしてるし」
ところが、チカラの答えは依然冷たいものだった。
ケガさえなければ……と思うと、さっきの奴らへの怒りが再び沸々とわいてくる。
一体いつになったら……と考えていると、チカラが急に制服の裾を引っ張ってきた。
「どうした?」
「今日は、ありがとうございました」
「……別に」
「東郷先輩、大好きですっ」
チカラは何の気なしに笑っている。
なんか、もう…
コイツは俺を惑わせる、天才なんだな。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!