もうちょっとメイクビリーブ
C
そんなハズないだろう。
「中谷さん!!ホンマすんません!!大丈夫ですか?」
東郷先輩がボコボコにされている隙に、真木くんが駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫だよ。俺は…」
幸い、まだ数発しか殴られていなかった。痛いっちゃあ痛いけど、なんとか…
それより、東郷先輩が来るとは思わなかった。
相変わらずヒーローみたいな登場の仕方だ。それなのに、東郷先輩は男たちの攻撃を避けてばかり。なんで反撃しないんだ……?
「あのー……師匠って、いろいろ言うといてケンカできないんちゃいます?俺、もっと強いと思てましたわ…」
真木くんが遠慮がちに言ってきた。いや、もちろん強いハズだけど…
「中谷さん?俺、警察呼んで…」
「あぁっ!?」
もしかして、もしかすると、俺のせいか……!?あの東郷先輩ならありえる。
もし東郷先輩が、俺のことを考えてくれてるなら…
「東郷先輩!!」
先輩に聞こえるように、大声で叫ぶ。
男たちは一瞬止まったけど、また東郷先輩を殴り始めた。
「俺、東郷先輩のこと嫌いになんかなってません!!だから……負けないでください!!」
真木くんは隣でポカンとしてる。
一瞬の間が空いて、東郷先輩が自分の身を庇いながら返事をしてくれた。
「……使ってもいいんだな?暴力…」
や、やっぱり。
「使ってください!!だから、もうこれ以上…」
そう言うや否や、東郷先輩が一番はじめに殴った男に思いっきり蹴りをいれた。男はそのまま地面に倒れる。
今度こそ男たちの動きが止まった。
「……中谷、一番ムカつくのどいつだ?」
「え……そこの人、かな……顔に唾吐かれたし…」
嫌な予感を覚えつつ指をさす。
その直後、東郷先輩がその男に見事な正拳突きをいれていた。
それから十数分の間、見ていて悲惨すぎたので俺は目を伏せていた。
いよいよ不安になってきて「東郷先輩!!」と叫ぶと、ようやく東郷先輩は止まってくれた。
「あの、相手はほとんど中学生なので……ケガとかさせちゃダメですよ…」
「……おせぇよ」
「えぇっ!?」
勇気を出して顔を上げると、あれだけの人数が全員倒れてピクリとも動いていない。
「……こ、殺してないですよね?」
「そこまではしてねぇ」
一応は真木の同級生だろ、と東郷先輩はため息をついた。
良かった…
「……中谷、大丈夫か?ついでに真木も」
「俺はついでですか?」
大丈夫と言ったら嘘になるけど……これ以上東郷先輩に暴れられても困る。
「また、東郷先輩に助けられちゃいましたね…」
「……お前、あんまムチャすんなよ……真木の身代わりになるとか、俺がどれだけ心配したと…」
あ、いつもの東郷先輩だ。
……なんか、嬉しい。
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