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もうちょっとメイクビリーブ

東郷先輩と付き合うことになって、もう何ヵ月たったんだろう。
少しずつ距離が縮まったような気もするけど、やっぱり一生わかりあえないような気もする。
今日、この頃。

「今日、夏樹が授業中寝てたんですよ。俺、初めて夏樹の居眠り見ました!!」

「……へぇ」

第一に、東郷先輩は俺の話に興味を示してくれない。夏樹の話や紅葉の話、たくさんしてるのに「へぇ」ばっかりだ。
そりゃあ、俺の話なんて面白くはないかもしれないけどさ…

「東郷先輩も、あんまり寝ませんよね?寝顔、見たことないかも…」

「まぁ……人前で寝るのは好きじゃねぇからな」

「あぁ、シマウマみたいな感じですか?」

「……いや、たぶんちげぇ…」

それでも、こうして帰り道での会話が続いてるだけ成長したんだとも思う。
昔は早く家に着かないかってソワソワしてたし…

「……あれ、なんか聞こえませんか?」
向こうの通りから、何人かの男の声がする。怒鳴り声の中に、叫び声が混じってるような…

「東郷先輩……なんか、心配じゃないですか?」

東郷先輩はため息をついて「ただのケンカだろ……ほっとけ」と言う。確かにうちの生徒同士のケンカなら関わりたくないけど、叫び声が気になる…

「お、俺……ちょっとだけ、様子見てきます!!」

「えっ……中谷!!1人で行くな!!」

良かった、東郷先輩もついてきてくれた。俺1人じゃ怖かったんだ。

声がする方を辿っていくと、道端で中学生の男の子たちが暴力をふるっていた。殴られているのも、同じ学ランの男の子だ。

「せ、先輩!!あれってイジメじゃないですか?」

イジめている男子学生は5人。あれって集団リンチって言うんだっけ。かわいそうだ、あんなに殴られて…

「助けた方がいいですよね!?」
そう言って踏み出した途端、東郷先輩に腕を掴まれた。

「なんでお前が止めんだよ?」

「え!?……だってかわいそうじゃないですか」
うちの生徒がやってるケンカとはワケが違う。あんな一方的に暴力をふるうなんて、ひどすぎる!!

「別に死にゃあしねぇよ。ほっとけ」

「な、なんでそんなこと言えるんですか!!」

「お前を危険な目に遭わせるくらいなら、あんなガキ共どうでもいい」
東郷先輩はしれっと答える。

なんてこと言うんだ。
そうか、東郷先輩はいつも殴ってる側の人間だから殴られる痛みなんてわかんない…

「そうだ、東郷先輩なら止められますよね?」

東郷先輩は怪訝な顔をした。
俺は一生懸命あの集団リンチを止めてくれるよう頼む。
「お願いします……ちゃんとお礼はするので…」

『お礼』の一言が効いたのか、東郷先輩はため息をついて頷いてくれた。

「お前は来んなよ。ここで待ってろ」

「はい!!あ、ケガしないように気をつけてくださいね…」

「わかってる」

東郷先輩は中学生たちの方に歩いていった。
大丈夫かなぁ……?

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