もうちょっとメイクビリーブ
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「もうちょっと正直になれたらなぁ…」
金曜日の夜。
本当なら今、東郷先輩の部屋にいるはずだった。だけど俺がいるのは自宅のリビング。
俺が、素直じゃないから。
『泊まりに来い』
帰り道、東郷先輩にそう言われて、『なんで命令口調なんだ』って少しイラついた。
だから『変なことしませんか?』って懐かしい口癖で返してみたんだ。
『する』
すると東郷先輩に即答されて余計にイラッときた。
『じゃあ……行きません』
そう言うと東郷先輩の綺麗な顔に少し動揺が浮かんだ。
その表情は罪悪感を誘うからやめてほしい。
『中谷……俺たち恋人同士なんだぞ?俺は休日もお前と一緒にいたいし、お前と一緒にいたらセックスだってしたくなる』
な……
なんで毎度毎度こんなストレートに恥ずかしいセリフを吐けるんだ。
たちまち俺はどうしていいかわからなくなる。
『……中谷』
東郷先輩が俺の腕を掴む。
あ、ダメだ。キスされたら最後…
『や……やだっ!!俺は東郷先輩と、そういうことしたくないんです!!』
思ってないことほどスラスラ出てくるから、俺の口って不思議だ。
こんなこと言ったら東郷先輩がどれだけ傷つくか、さすがの俺でもわかるのに。
『……中谷!!俺は…』
『嫌だってば!!』
東郷先輩を非力な手で突き飛ばすと、俺は全速力で家に向かった。
それで、そのまま。
謝りたいのに、どうしても勇気が出ない。
「なんでこう素直じゃないかなぁ…」
リビングで1人ため息をつくと、弟の翼が話し掛けてきた。
「チカラ、もしかして恋の悩み?」
「え?いや、そんなんじゃ…」
「隠すなよ、最近様子おかしいし、彼女できたんだろ?」
……彼女は、できてない。
残念だけど…
「俺に任せとけって。絶対素直になれる秘訣があるから」
こいつ……弟のくせに偉そうに…
「……って、秘訣?どんな?」
慌てて尋ねると翼はニヤリと笑った。
「会う前に、ジンジャーエールを飲むこと」
「……はぁ?」
呆れた答えだな……ていうかそれは、秘訣っていうより…
「おまじないじゃんか」
「おまじないなんかよりもっと効くんだって!!」
ジンジャーエールにどんな効用があるっていうんだ…
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