もうちょっとメイクビリーブ
。
──同日、放課後。
「東郷くん、なんで不良にケンカふっかけたりしたの?」
人もまばらになった教室で、訊きたくて仕方なかったことを言ってみた。
東郷くんはシカトを決め込んだ…
かと思ったら、面倒そうに「ケンカ、したかったから」と答えた。
「……すごいね、俺ケンカなんて絶対したくないけど」
「俺は、もっとしてぇ。強くなりてぇんだ」
強く……?昨日誰かそんな話してたな。
強い男は憧れられるとか…
……俺か!!
「東郷くん、強くなりたいの?」
東郷くんは小さく頷く。なんかよくわかんない、けど…
「だったら、俺と同じ高校行こうよ?」
「……は?なんで…」
「え?不良いっぱいいるから」
俺は歩いて行ける近くの高校に行きたいと考えていた。
めちゃくちゃ荒れてるからやめようかとも思ったけど、東郷くんも一緒ならなんか大丈夫そうだし。
「そこでトップになれたら相当だよ。まさに『男が憧れる男』だね」
最後の一言が効いたのか、東郷くんが真面目な顔で考えこむ。
「まぁ、考えといてよ。あ……男子校だけど、良い?」
「それは……かまわねぇよ」
「本当に?女の子いないんだよ?飢えない?」
『俺は男も大丈夫だから飢えないけど』、という言葉をとりあえず飲み込んだ。
東郷くんはまた面倒そうに呟く。
「別に……女なら、いるし」
「……え、彼女いんの!?」
びっくり。そりゃ女の子に素っ気ない態度とるわけだ。女に困ってねぇんだもんな。
「まぁいいや……ますますピッタリだね。一緒の高校行こうよ」
東郷くんの顔はそこまで嫌そうじゃない。うーん、高校生活楽しくなりそう。
「……で、なんで『男が憧れる男』になりたいの?」
そう言うと、東郷くんは「いつか話す」とだけ答えた。
なんだそれ、つまんない!!
「……おい」
「ん?」
「……お前、名前なんつーの」
「……今さら!?」
ここ最近話し掛けてた俺はなんだったのさ?
虚しいにもほどがある…
「俺の名前は、黒坂昴」
「黒坂な」
「昴でいいよ。俺もリュウって呼んでいい?」
東郷くんは表情を変えずに「勝手にすれば」と言うと、すたすたと去っていった。
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