もうちょっとメイクビリーブ
◇
「中谷……いつまでそんなこと言ってんだ?」
今までとはうってかわった東郷先輩の冷たい声に、思わず顔を上げた。
「信じろよ、中谷……好きだ」
そう言って俺を見つめる東郷先輩の目は、すごくかっこいい。でもこの目で見つめられた人が、俺以外にもいるんだ…
「好きだ」なんて、信じられない。こんなこと言いながら本命の女の子にはアクセサリーなんかプレゼントしたんだ。
きっと誕生日だったんだろうな…
「やめて下さいっ……わかってますから!!」
「……何をだよ?」
怒りの混じった東郷先輩の声。
なんでしらばっくれたりするんだ……!!
「と……東郷先輩は、俺がキスとか……その、ああいうのとか……拒んでばっかりだから、他の人としたくなっちゃったんでしょう!?」
「……はぁ!?」
「そ、そりゃ俺は男だし地味だし……遊ばれても仕方ないですけど、だからって黙って他の女の子にプレゼントなんてっ…」
「中谷!!……なんの話をしてるんだよ?」
「しらばっくれるのも良い加減にしてください!!こ……ここに証拠がありますから!!」
ついに俺はテーブルの下に隠していた冊子を東郷先輩に突き出した。
「なっ……中谷…」
東郷先輩の珍しく動揺した顔。
どうだと言わんばかりに俺は東郷先輩を睨み付ける。
「中谷……そうか、それ見たんだな…」
「お……お別れですね…」
言葉にしたら余計に涙がこぼれてきた。『離さない』って言ったのはそっちのくせに、なんで俺がこんなに傷つかなくちゃいけないんだ…
嫌だ、本当は別れたくないのに…
「……って、待て!!なんでそんなに話を飛躍させるんだ、お前は…」
「へ……?だって、これ本命の女の子に…」
「本命も何も俺にはお前しかいねぇよ!!これだってどう考えても…」
……どう考えても?
どう考えても女の子への誕生日プレゼントか何かじゃ…
「……ちょっと待ってろ!!」
首を傾げる俺を置いてリビングを出ていく東郷先輩。
どういうことだ……?
別れ話……じゃないよな?
だって東郷先輩、「俺にはお前しかいねぇ」って言った…
言ったよな、確かに……うん、言った。
とりあえず俺は、東郷先輩が戻るのを待つしかなかった。
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