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もうちょっとメイクビリーブ

「中谷……?」

電話を終えて戻ってから、チカラの様子がおかしい。
ずっと暗い表情で何か考えこんでる。
勉強は一通り教えたし、別の悩みでも抱えてんのか?

とにかく心配でならない。
もう一度「中谷」と呼ぼうとすると、チカラが突然近づいてきた。

「どうした?」

チカラは俺に体を寄せて、俺の服の裾をぎゅっと掴んだ。
……誘ってるのか?
もしそうなら、いつそういう雰囲気に持っていこうか考えていた俺にとっては朗報だ。

チカラはピタリと動きを止めたまま。バカか……ここまで来たら、キスしてこいよ…

バクバクいう心臓を抑えながら、チカラの背中に手を回した。

「うわぁっ!?」

するとチカラは、肩を跳ねさせて飛び退く。

「あ、あの……そういうんじゃ、ないですからっ…」

……そういうんじゃないなら、他に何があるっていうんだ?
そう思ってチカラを睨むと、すぐに目を逸らされた。

またそうやって、俺を惑わせるのか…

「中谷……?」

そう言いながらチカラの頬に手を伸ばして……触れる前に、手を払いのけられた。

……本当に、どうしたんだ?
頬に触れるくらい、今まで何ともなかったはずだ。
予想外のチカラの拒絶に、心がざわつく。

「中谷……頼むからなんか言えよ。どうかしたのか?」

チカラは俺の質問に首を振る。
そしてゆっくり口を開いた。

「……先輩、俺のことどう思ってますか?」

「……そんなの……言わなくたって知ってるだろ?」

「……一応、聞いてみたくなって…」

「……中谷、どうしたんだよ?」

好きだ。愛してる。
チカラの為なら何度だって言えるけど、チカラに安っぽい言葉だと思われるのも嫌だった。
『一応』なんかで言えるほど、簡単な気持ちじゃないんだ。チカラ…

「そうですよね……よく、わかりました……東郷先輩がもっ……俺のこと……っく……す、好き、じゃないっ……ひっく……って…」

……な…

なんでそうなるんだ!?

チカラは涙を隠すように俯いたまま。俺がチカラのことを好きじゃなくなるなんて、どうやったらそんなありえないこと思いつくんだ…

「中谷!!悪かった、ちゃんと言うから…」

「もっ……い、いっ…」

「チカラ!!……愛してる…」

今度こそ心からの本心を告げたのに、チカラは泣きじゃくったまま応えた。

「……嘘つきっ…」

……嘘つき?
俺が、嘘ついてるっていうのか?
俺はできる限りの力でお前を大切にしてるし、愛情表現だってしてる。
それなのに、まだ俺の気持ちを疑ってるのか……?

そんなの……最低だ。

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