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もうちょっとメイクビリーブ

携帯のサブディスプレイを見た時、わが目を疑った。

『中谷力』

恋人から着信が来て驚く高校生なんて自分だけなんじゃないか、とも思うけど無理はない。
チカラから電話なんて初めてだったからだ。

日曜の昼間に、恋人から初めての電話。
最高のシチュエーションだ。

急いで通話ボタンを押すと「あ、東郷先輩ですか?」と愛しい恋人の声。

「どうした?」

「いや、あの……今、大丈夫ですか?」

大丈夫も何も、お前と話す時間より大切なものがあるわけないだろ…

「えっと……もし良かったらでいいんですけど、数学教えてもらえませんか?」

「……数学?」

「月曜に小テストがあって……な、夏樹に電話しても繋がらなくて!!わかる人を……探してて…」

チカラが俺を、頼ってくれてる…
こんなに嬉しいことがあるだろうか?
もちろん快諾すると、チカラが急に数式を唱え始めた。

「おい、待て……電話で教えるのか?」

「え、ダメですか?」

「ふざけんな、めんどくせぇ……会って教える方が絶対早い」

実際どう考えても、会うための口実だ。
だけどチカラはそんなこと思いつきもしない。
この鈍感なところが好きだ。

「うーん先輩がそう言うなら……今からおうち行ってもいいですか?うちは親がいるので…」

チカラが、うちに来る。
ガキみたいだけど、胸の高鳴りは抑えられない。
「早く来いよ」と念を押して、俺はチカラの到着を待つ。

数十分すると、インターホンが鳴った。

「……こ、んにちは…」

どこか気まずそうな目で俺を見るチカラ。
持ってる鞄には数学の教科書が入っているんだろう。

「……入れよ」

そう促すとチカラはおずおずと部屋に入る。
こんな時いつも思うんだ。
この部屋が、檻になればいいのに…

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