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もうちょっとメイクビリーブ
東郷リュウの話
なんで毎回こうなるんだ…
良いムードにして少しずつ迫れば良いのかもしれないけど、そういうのはすげぇ苦手。
つーか、チカラに対する欲が勝つ。どうしても先に手が出る。

早く、チカラと2回目のセックスがしたい。
だけどいっつも、チカラが怒って中止になる。
そんなに俺が嫌いか……あの時、俺に会いに来てくれたチカラはどこへ行ったんだ!!

「中谷来ると良いねぇ。今ごろ夏樹くんと教室で食べてたりして」
昴がからかうように言う。

大体、なんで付き合ってるのに未だに4人で飯食ってんだ…
もう昴と転校生はいらねぇだろ!!

「こ……来なかったら、許さねぇ」

「どう許さないんだよ」

俺が答えに窮していると、屋上のドアが開く音がした。俺はすぐさまそっちへ視線を移す。

……なんだよ、来たじゃねぇか…
ひとまず胸を撫で下ろす。それでも……どうすればチカラが機嫌を良くしてくれるかまだ考えついていない。

チカラは俺の傍まで来ると、立ったまま俺の名前を呼んだ。

「東郷先輩」

「何だよ」と小さく返すと、チカラも小さな声でボソボソ呟いた。

「俺は……東郷先輩にもうちょっと信用してほしいです。東郷先輩は、心配しすぎっていうか、なんていうか…」

後半はもうゴニョゴニョしていてほとんど聞こえない。俺が反応に困っていると、転校生が「チカラさん!!頑張って下さい!!」と肩に手を置いた。
くそ、チカラに触んな。

転校生を睨んでいると、その隣から急に大声が聞こえた。
「だから!!俺は東郷先輩のものなんだから……よそ見なんてしません!!」
大体、俺があんな物観るわけが……とかブツブツ言ってるチカラ。

……あー、ダメだ。
俺たち、男同士なんだって。
人前でイチャついちゃいけないんだって。
でも、無理。

「と……東郷先輩!?」

チカラ。すげぇ好きだ。
これだからお前のこと好きなんだ。

一層力を込めて、チカラを思い切り抱き締める。
チカラも抵抗しても無駄だとわかっているから、じっとしたまま動かない。

あー、幸せ。

「あーもう見てらんないね。どう思う?夏樹くん」

「……平和、ですね!!」

「……そうだね、平和だねぇ。じゃあ『リュウと中谷のその後』は『平和』ってことで」

昴と転校生がなんか言ってるけど、どうでもいい。

この幸せさえあれば、後はどうでも。

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