もうちょっとメイクビリーブ
○
取り残されたのは、4人。
大笑いしてる黒坂先輩、
相変わらず可愛い顔できょとんとする栗原、
中谷の突飛な行動に固まったままの東郷先輩、
そして、俺。
一番に動き出したのは、もちろん東郷先輩だった。
あ、また中谷を追うんだろうな…
そう思ったら、黙って見届けることなんてできなかった。
「東郷先輩っ!!」
「……何」
ものすごい勢いで俺を睨む東郷先輩。
怖いけど……言うなら今しかない!!
「す……好き、です…」
緊張で息が詰まる。
涙が出そうだけど、大好きな東郷先輩の前でみっともない姿は見せたくない…
東郷先輩は俺の告白に少し動揺を見せた後、一言だけ呟いた。
「……あっそ」
東郷先輩が振り向いて中谷が去って行った方向を走る。
その背中を見ていたら、ついに涙がこぼれてきた。
「大丈夫かー?」
振り返ると黒坂先輩が肩に手を置いてくれた。
俺……何してんだ。
「黒坂先輩……なんで東郷先輩は、あんな平凡男と付き合ってるんですか?」
泣きながら俺が尋ねると、黒坂先輩は目を丸くしてまた大笑いした。
「確かに中谷は地味だよね!!……じゃあ、君はリュウのこと顔で好きになったの?」
……え?
そんなわけない。確かにあの綺麗な顔も好きだけど、俺が好きなのは先輩の男らしいとことか、強いのにイキがらないとことか…
「リュウも中谷を顔で好きになったわけじゃないよ。中谷には君の知らない魅力がたくさんある。あいつは平凡だけど、すごい良い奴だから」
ねぇ、夏樹くん?
そう言われて栗原も大げさに頷く。黒坂先輩の珍しい真面目な表情を見て、ようやく気がついた。
そっか、俺…
「中谷に、ひどいこと言った…」
俺、あの2人のことなんも知らないのに勝手に中谷を恨んで、最低だよな…
東郷先輩のことだって、何も知らないのに。
「……大丈夫、中谷には俺から謝っとくよ」
「許して、くれますかね?」
「だ、大丈夫ですっ!!」
急に大声をあげたのは、栗原。
「チカラさんは優しいのです!!きっと、すぐに許してくれますよ!!」
「……だって、良かったね」
黒坂先輩もそう言って笑う。
俺も、そんな気がしてきた…
そうだよ、良い奴に決まってる。
なんたって、俺の大好きな東郷先輩の大好きな人なんだからな。
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