もうちょっとメイクビリーブ
○
「やっ……はぁ……もう、やめてっ…」
「まだだ……お前はまだ、わかってねぇよ」
死にたい…
東郷先輩から愛の言葉を囁かれたり、束縛されたり、先輩とキスしたり、セックスしたり…
俺の夢は全部、現実では中谷のもの。
しかもあいつはそれをことごとく脚下にしてるという…
許しがたい事実だ!!
挙げ句の果てに俺は嫉妬の対象。
もうなんかいろいろ悲しい…
「……中谷、本当にお前はもう…」
「あ……やだっ……も、やめてっ!!」
バシバシと東郷先輩が叩かれる音が聞こえる。
あの美形に迫られといて、よく暴力なんかふるえるな…
「……今日は、やけに抵抗の時間がなげぇな」
「だって、ここ学校ですよ!?場所さえ考えてくれれば…」
「場所さえ考えたら……いいんだな?」
「あ、えっ!?いやっ…」
なんだこの甘ったるい会話…
中谷のボケボケ発言もここまで来ると計算なんじゃないのか?
すると2人がごそごそと動き始めた。どうやら移動する事で話がまとまったみたいだ…
って、やばい!!
俺は迅速かつ忍び足で保健室を出る。
ずっと立っていたから足が痛い。サボるはずだった授業はとうに終わっていた。
なんか本当、衝撃的映像……じゃない、衝撃的音声だったな…
「逃げんのか中谷ぃっ!!」
「あ……あんたが変なこと言うからでしょう!?」
2つの怒声に振り返ると、俺の方に向かって廊下を疾走する中谷と、追い掛ける東郷先輩。
今度はおいかけっこか……?
「あっ心優しき不良さん!!」
必死の形相の中谷と目が合った。
とりあえず立ち止まると、中谷は俺の背中に回ってしゃがみこむ。
「おい、何だよ……?」
「あ、頭おかしい人に追い掛けられてて…」
「待て!!な、かたに…」
追い掛けてきた東郷先輩が俺を睨んだ。
うわ……俺、東郷先輩と目合ってる。
どうしよ、すげぇ嬉しい…
「……誰だ?お前」
うわわ!!話し掛けられてる。東郷先輩が俺に、「誰だ」だって。
「あの、俺は…」
「後ろにいる奴、俺のだから」
そう言われると何て返したらいいかわからない。
どうしよ、俺絶対嫌われてる…
無反応の俺に舌打ちをして、東郷先輩は言葉の方向を中谷の方へ移した。
「中谷……いい加減にしねぇと、怒るぞ」
「じゃあ、さっきの発言は撤回してくれるんですか?」
何を言ったんだ東郷先輩…
東郷先輩は「それはまた別の話だろ?」と言ってため息をつく。
「や……やだ!!じゃあ行きません!!」
「中谷!!」
「い……嫌なもんは、嫌なんだあぁ!!」
慌てて後ろを振り返ると、走り去る中谷の姿。
気付いた時には東郷先輩も中谷を追って消えていた。
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