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もうちょっとメイクビリーブ

そんな変人と初めてコンタクトをとったのは、俺が授業をサボって校舎をうろうろしている日のことだった。

「うやぁっ!?」

奇妙な叫び声に振り返ると、うつぶせになって倒れた男の姿があった。
あの頭……栗原のオマケ男か?

誰かがいたら、シカトしてたと思う。
「大丈夫か」と声をかけたのは、東郷先輩の近くにいる人物と関わってみたかったからだ。

「あ……ありがとうございます!!だ、大丈夫ですっ」

どもりすぎだろ……同い年なのに敬語だし。
中谷の手を引いて「どうしたんだ?」と尋ねると、『理由もなく自分の足に躓いた』というなんとも言えない答え。

変人すぎて、ムカついてきた…

「お前、授業サボってていいのか?」

「あ、そうだ!!ちょっと人に呼ばれてて……これから会いに行かなきゃいけないんですよ」

『会いに行く』という言い方がどうも気になった。まるでなんか、デートみたいな?

「恋人か?」

冗談でそう言うと、中谷の顔が赤くなった。
え……マジかよ。

「いや、あの、そういうんじゃ…」

そう言って逃げるように去る中谷。
あの平凡、恋人いんのか…
意外すぎる。
まぁどうせ東郷先輩の足元にも及ばない平凡男なんだろうな…

そう思いながら、俺は適当にサボり場所を探した。



ここで寝るかー…

たどり着いたのは保健室。
教諭はおそらく不在だろう。
全校で養護教諭を見たことのある生徒はいない。

扉が開いているので何も考えずに入ると、ベッド傍のカーテンが閉まっていた。

先客か……?

「こうやって人を騙すのもたいがいにしてもらえませんか!?」

「騙してはねぇだろ!!」

「授業中に『保健室に来い』なんて言われたら体調崩したのかなって思うでしょう!!」

カーテン越しに聞こえた2人の話し声。
……東郷先輩!?
大好きな先輩の声だ。間違えるはずがない。
相手の声の主もすぐにわかった。
さっき話したばかりなんだから…

「うるせぇな、サボってたらお前に会いたくなったんだよ……仕方ねぇだろ」

「仕方ないこと何一つないじゃないですか!!大体、この前だってアンタは…」

この前も思ったけど、本当に失礼な話し方だよな……じゃなくて!!
なんだよこれ……どういうことだ?

「あーもうそんなん後で良いから……中谷…」

「や、東郷先輩っ……ん、う…」

足が震える。
信じられない…

東郷先輩の恋人が、まさかこっちだったとは…
栗原だと決め付けていた自分がバカみたいに思えたが無理はない。
どう見ても東郷先輩と釣り合っているのは栗原の方だし…
こんな奴地味だし失礼な態度だし…

俺はショックのあまり動くことができず、キスの合間に零れる2人の呼吸をしばらく聴くことしかできなかった。

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あきゅろす。
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