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もうちょっとメイクビリーブ
甘ったるい2人の場合(V)
「東郷先輩っ!!」

呼び掛けても東郷先輩はシカト。
ゴールデンウィーク前も相っ当不機嫌だったけど、今は完全キレてるよ…

俺は慌てて東郷先輩を追い掛ける。
怒ると怖いし、この人…

「先輩、怒ってますか……?」

「別に」

「お、怒ってますよね?」

東郷先輩は振り返って俺の頭に手を置いた。
「俺がお前に怒るわけねぇだろ……落ち込んではいるけどな」

そう言ってソファーに座る東郷先輩。そんな言い方されると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
俺なんかが、東郷先輩を寂しい気持ちにさせてしまったんだろうか…

「……東郷、先輩…」

東郷先輩に近寄って顔を覗き込むと、心なしか悲しそうな顔。

うわ、なんか……なんか、なんていうのか…
今すごい……好き、かも。東郷先輩のこと…

そう思ったら、ちょっとだけこの気持ちを伝えたくなった。
東郷先輩の隣に座って少しずつ顔を寄せてみる。

ここでいつも先輩がするみたいにかっこよく口づけを……するつもりだったけど、寸前でやっぱり恥ずかしくなった。

少し唇から離して、結局頬の辺りにキスをする。
しかも触れたか触れないかくらいの一瞬のキス。
……だって、恥ずかしいし…

ゆっくり顔を離して、おそるおそる東郷先輩の顔色を窺う。
東郷先輩はなんと、顔を真っ赤にしていた。

うーん……機嫌直してくれたかな?

「お前……何すんだよ…」

「あ、えっ!?ごめんなさい、嫌でしたかっ?」

「嫌なわけねぇだろ、バカ…」

よかった……びっくりさせやがって。

「って……何してんですか……?」

東郷先輩は真っ赤に染まった自分の頬を手の甲で触り、その甲に口付けをした。
変な人…

しばらく東郷先輩に軽蔑の視線を送っていると、また頭を撫でられた。
俺は小さく「ん?」と呟く。

「中谷……今日まで会えなかった分、覚悟しろよ」

東郷先輩の目が変わった気がした。

「あ、東郷先輩お土産……美味しいお菓子が…」

「お菓子はお前を食った後だ」

俺は食べ物じゃない!!

どうしよう。一度自分からキスしちゃっただけに、今日はもう逃げられない気がする。

ほらもう東郷先輩の手が、俺の股間に…





旅行は好き、だった。
非現実的っていうか、いつもの生活から離れる感じが良い。

でもよく考えたら、俺の生活この人に出会ってからずっと非現実的だ。
東郷先輩といれば、俺はずっと旅行気分でいられるのかもしれない。
なんて。

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