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もうちょっとメイクビリーブ
甘ったるい2人の場合(T)
「家族旅行!?」

柄にもなく大声をあげてしまった。それくらい、予想外だった。考えもしなかった。

チカラに会えない、連休なんて。

「わぁ、羨ましいです!!家族水入らずですね!!」
転校生がなんか感激してる。
未だに4人で昼飯食ってる意味はなんなんだ、と思うけど今はそんなことどうでもいい。

大事なのは連休にチカラに会えないこの事実だ。

「うん。年中行事なんだ」

楽しそうなチカラの顔を見て、ちょっとムッとした。
俺に一言なんかあんだろ。
『会えなくてごめんなさい』とか。
『寂しいです』とか。
ムカついて飲み終えた缶を握り潰した。

「……東郷先輩?」

「何」

素っ気なく返事すると、チカラの表情に動揺が浮かんだ。
やっと気付いたか、鈍感め…

「あ……大丈夫です、お土産はちゃんと買ってきます!!」

「……いらねぇよ…」

あぁ、イライラする。
なんでわかんねぇんだこの超鈍感!!
でもこういうところに惚れてる自分もいるわけで、怒鳴ることもできない。

しばらくチカラのおどおどしてる顔を睨んでいると、昴が口を開いた。

「中谷、リュウくんはゴールデンウィーク中谷を独り占めしたかったんだって」

昴の余計な口出しにもイラついたけど、言ってることに間違いはない。
中谷を見ると少し顔を赤くして「ほ、本当ですか?」と照れた。

……くそ、そんな顔されたら怒りが失せるだろうが。

「あの、4日には帰って来るので、5日なら…」

5日って……最終日じゃねぇか。
それまでチカラに会えないのか…
耐えられんのか?俺。

「……わかった。5日、俺の家に来い」

チカラは笑顔で頷いた。
いつもは嫌そうな顔するくせに。俺を殺す方法を知ってるんだな、こいつは…





そして始まったゴールデンウィーク。約束の日まで俺は何をしていたかと言うと、殴り合いをしていた。

いつもより夜の街が騒がしくて、何度もケンカした。
殴れば殴るほどチカラが心配してくれるような気がして、心地よかった。

そんなことしかできないほど、俺はチカラに飢えていたってことだ。

……それなのに。
『今日、東郷先輩の家行かなきゃダメでしたっけ?』

チカラから来たメールをもう一度読み直す。
『行かなきゃダメでしたっけ』ってなんだ!?

『めんどくさいんですけど中止にしてもらえませんか』って意味か?ダメに決まってる!!

俺がどんな気持ちでこの日を待ってたと思ってるんだ!!

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あきゅろす。
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