もうちょっとメイクビリーブ
...☆
「あの……今日はすみませんでした…」
玄関先まで来るとチカラがペコリと頭を下げた。
仕方ねぇ奴だな…
俺は何も言わずにチカラの下を向いた頭を撫でる。
「……東郷先輩が気を悪くしなくて良かったです。俺、ちょっと心配だったけど…」
紅葉の話をしてるんだろう。確かに、他のガキだったらキレてたかもな…
「それは……あいつが、お前に少し似てるから…」
正直な理由を教えてやると、チカラがまた俯いた。照れてんのか?
そう思ってチカラの顎をゆっくり持ち上げる。
だけどチカラの顔は俺の予想に反して全く赤くない。それどころか……ちょっと、拗ねてる?
「……か…」
可愛い…
チカラは俺から目を逸らして口を尖らせながら呟いた。
「……俺に似てれば、俺じゃなくても良いんですか?」
「……ん、なわけ…」
ため息をついたと同時に、我慢できなくなってついにチカラを抱き締めた。
……チカラ。どうしてそんなに俺を狂わせるんだ。
顔も、体も、中身も全部、お前じゃなきゃダメに決まってる。
この世でお前だけが、本当に愛しいんだ…
来て早々、ガキのせいで追い返されることになった、最低な日だ。
だけど、一生忘れることのない最高の言葉を聞くことができた。
『ヒーローなんだよ……俺の』
『俺に似てれば、俺じゃなくても良いんですか?』
「……たまには、こんなのも悪くねぇな…」
耳元でそう呟く。
チカラの耳が、今度こそ赤くなる。
俺はもう一度チカラの顎を持ち上げて、唇を重ねた。
「ん……せんぱ…」
顔を離して見つめ合うと、チカラの最高に色っぽい顔。
やべ、抑えらんねぇかも…
もっと深くチカラの口内を味わおうと、チカラの後頭部を掴む。
その時、
足元で大きな声が聞こえた。
「チカ兄ちゃん本当にゴウくんと仲良いんだなー!!」
2人で慌てて下を見ると、目を輝かせて俺たちを見る紅葉の姿。
「み……見てんじゃねぇ!!」
……キスは見られてないよな?
俺は構わねぇけど、チカラが怒るだろうし……ちょっと気になる。
「だって抱き合ってるじゃないかー」
「う、るせぇっ!!今見たものは忘れろ!!」
チカラが突然しゃがみこんでしまった。見ると泣きそうな顔で紅葉を見つめている。
ほら見ろ……俺のチカラを泣かせやがって!!
「チカ兄ちゃん、どうしたのー?」
「と……東郷先輩のバカっ…」
ほら、今日はやっぱり…
「……最低な日だ…」
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