もうちょっとメイクビリーブ
..☆
チカラが紅葉を降ろすと、紅葉はすぐに俺を指差した。
「ところでこいつは、チカ兄のお友達?」
チカラが急に押し黙った。
そりゃ言えねぇよな、恋人なんて…
「……こいつとか、言っちゃダメだろー?」
チカラが引きつり笑いで紅葉の頭を撫でた。
話を逸らしたな…
紅葉は俺の方を見てぽかんと口を開けた。
「……ごう、りゅう、とうくん?」
バラバラじゃねぇか…
「東郷リュウ」と呟くと、紅葉は「ゴウくんかー!!」と満足したように笑った。
なんで真ん中を取るんだ…
「ゴウくんは、チカ兄の友達?」
「さぁな……大人になったら教えてやるよ」
紅葉は「僕もう5歳だぞー!!」と拗ねた顔。
ヤバい。チカラが拗ねたらこんな感じなのか……可愛い。
チカラはこんな表情絶対見せてくれねぇもんな…
「ゴウくんも一緒に夜ご飯食べるのか?」
「いや、俺はもう帰る……誰かのせいでな」
少しだけ紅葉を睨んでやると、やっぱりチカラと同じ顔をした。
当のチカラを見ると、いつも通り怯えてる。
そんな怖いのか?俺…
「ゴウくん、チカ兄ちゃんともっと遊びたかった?」
当たり前だろ…
お前の思う『遊び』じゃねぇけど。
すると紅葉はそばにいる俺に手招きをした。
俺は訝しがりながらもしゃがんで紅葉に顔を近付ける。
「……何だよ」
そう言うと紅葉は俺の頭に小さな手を乗せてポンポンと叩いた。
「……よしよし」
「なっ…」
『何すんだよ』とは、言えなかった。
なんでこんな中途半端に似てるんだ?
だって少し、チカラに撫でられてるみたいな…
「紅葉!!東郷先輩に失礼だろ!!」
何もできずにいると、真っ青になったチカラが紅葉を引き剥がした。
こいつ本当に俺のこと恐れてるよな…
「……中谷、別に怒ってねぇよ」
チカラにそう言うと安心したように微笑んだ。すると今度は紅葉が口を開く。
「ゴウくん、僕も中谷だから紛らわしいよー。名前で呼べば良いのに」
……呼べねぇんだよ…
心の中では俺だって名前で呼んでるんだ!!
「……帰る」
一言そう呟くとチカラが焦って「送りますっ」と言ってきた。
「別にいい」
「あ、じゃあ玄関まで…」
チカラが付いて来たので俺は無言で玄関に向かった。
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