もうちょっとメイクビリーブ
.☆
「先輩っ!!もう、どいてぇっ…」
チカラがドンドンと俺の肩を殴る。
さっきまで受け入れ態勢だったくせに…
そうは言っても、俺だって他人(ましてやガキ)に見せつけたい願望があるわけじゃない。
離れてやろうと上半身を起こすと、仁王立ちをしていたガキが駆け寄ってきた。
お面をつけてるからわかんねぇけど、たぶん怒ってんだろう。
「わるものめー!!」
俺はチカラの体に跨ったまま。するとガキは俺の脚をポカポカと殴ってきた。
「ば、バカ紅葉!!その人を誰だと思って…」
「チカ兄ちゃん!!大丈夫?」
「いいからその人から離れろ!!殺されるぞ!!」
……殺さねぇよ…
俺はチカラの体から降りて、ついでにチカラの体も起こしてやる。
「……中谷」
文句の一つでも言おうとチカラを呼ぶと、愛しいチカラと一緒に……何故かガキも返事した。
「なんだよ悪者め!!」
「……お前は呼んでねぇ」
「だ、だって僕『なかたに』だもん!!」
チカラを睨むとおどおどしながら言った。
「父方の従兄弟なんで……ほら紅葉、挨拶しな」
後半の言葉は紅葉とかいうガキに向けられていた。
「なかたにもみじだ!!5歳だからな!!」
また仁王立ちになって叫んだ紅葉。
「なんでそんなに偉そうなん…」
言葉が途切れて、先が出てこない。お面を取ったそいつの顔が……少しだけ、チカラに似ていたのだ。
「……東郷先輩?」
「お前はなんていうんだー?」
チカラと紅葉が不思議そうに俺を見つめる。
やっぱ面影ある……やべぇ、もうこいつには下手なことできねぇ…
「……俺は、東郷リュウ。別に覚えなくていい」
目を逸らして言うと紅葉が急に叫びだした。
「お前よく見るとマケルンジャーに似てるなー!!」
「……はぁ?」
チカラがすかさず「紅葉が好きな戦隊ものの名前ですっ」とフォローをいれてくれた。
あぁ……さっきのお面はそれか。
「お前マケルンジャーが変身する前のタケルに似てるぞー。タケルよりちょっとお前の方がカッコいいけどな!!」
「知らねぇよ……つーかなんだそのネガティブすぎるネーミングは」
「マケルンジャーは強いんだぞ!!お前なんかこてんぱんだからな!!」
「紅葉っ!!」
チカラが紅葉を後ろから抱きかかえた。
「なっ!!中谷…」
俺以外の奴を抱きしめるな!!
そう怒鳴りたかったけど、相手はガキ。しかも少しだけチカラに似てる…
「なんだよチカ兄?」
不思議そうに見る紅葉にチカラが優しく語り掛けた。
「東郷先輩はな、とっても強いんだぞ?たぶん、マケルンジャーより強い」
「えー?ヒーローじゃないのに?」
「ヒーローなんだよ……俺の」
そう呟いて俺の方を見ると、チカラは照れ笑いをした。
俺はチカラを見つめられずに目を逸らしてしまう。
くそ……こいつが愛しすぎて、喉が焼けそうだ。
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