もうちょっとメイクビリーブ
R
よく寝る奴だな…
俺はため息をついて、チカラにもう一度毛布をかぶせる。
ついでに、チカラの頬に軽くキスを落とした。チカラはもちろん、起きない。
チカラ……本当に可愛い。
もう一度、お前と最後まですることができて良かった。
今まで我慢した甲斐があったというものだ。
……中に出したのは、さすがにマズかったのかもしんねぇけど…
チカラの肌触り、甘えた瞳、喘ぎ声。全てがまだ脳裏に焼き付いている。
チカラ……やっぱり、チカラの体は最高だった。もっともっとチカラの体を支配したくて、たまらない。
『リュウは嘘をつくのが好きだよね』
昴にいつか言われた言葉だ。
好きなわけではないが……どうしてもすぐについてしまうのだ。
今日も、また一つ…
『これっきりですよ?』
『わかった』
わかるわけがない。
これから、何百回だってチカラとセックスがしたい。
だけど、あの時はこう言うしかなかった。
まぁ、優しいチカラのことだ。次も頼みこめば『これっきりですよ』なんて言ってOKしてくれそうな気もする。
そして、もう一つ。
チカラについた嘘があった。
「……中谷」
小さく呼び掛けてもチカラは起きない。
俺はベッドの上に置かれたままの携帯電話を手に取って、こっそり寝室を出た。
リビングに向かい携帯電話を操作して、チカラの電話帳から『自宅』の電話番号を探す。
「……もしもし」
電話に出たのはチカラの母親だった。
チカラがうちに来て寝てしまったので泊まらせていいか、と尋ねると快く承諾してくれた。
『本当にごめんなさいね〜。チカラをよろしくお願いします』
「いえ、こちらこそ…」
挨拶して電話を切る。
チカラ、『なんで起こしてくれなかったんですか』とか言いそうだな…
でも、夜はこれからだろ?
俺はリビングの窓から外を見て、ニヤリと笑う。
雨上がりの夕焼け。そして、日が沈む。
『雨、まだ降ってるぞ』
チカラ、嘘ついて悪い。
雨はチカラが起きるずっと前から、とうに止んでいたのだった。
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