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もうちょっとメイクビリーブ
遠ざかる2人
「あ、プリント出すの忘れた!!」
6限の授業が終わり、帰り支度をしているとチカラさんが叫びました。

先生が「授業が終わるまでに出せ」と言っていたプリントです。
チカラさんはプリントを握って「先生追い掛けてくる」と言いました。

「頑張ってください!!」
「ありがとう。夏樹は待ってて」

先生が教室を出てから結構経っていますが、大丈夫でしょうか?
僕は帰り支度を終えて、チカラさんの机に散らばる荷物を僭越ながら片付けさせて頂きました。

そろそろ戻ってくるかな?と教室の入り口を見ると、一際背の高い金髪。不思議そうに辺りを見回しています。

「東郷先輩!!お疲れさまです」
鞄を持って急いで駆け寄ると東郷先輩は無言で頷きました。

「……中谷は」
僕が事情を説明すると、東郷先輩は「あ……そう」と呟いて立ち尽くしました。
とても気まずそうな顔をしています!!ですが僕も鞄を持ってきてしまったので戻るに戻れません。
チカラさんはまだでしょうか…

……ど、どうしよう。
何か喋らなくちゃ…

「……と、東郷先輩は、モテ線はありますか!?」

うわわ、チョイスミスです!!
東郷先輩は怪訝な顔で「はぁ?」と返してくれました。

「あの、昨日テレビで見たのです!!運命線の下のあたりに、あるらしいのですっ」

一生懸命説明すると、東郷先輩は無言で自分の左手を見つめました。
そして一言、
「……運命線が、わかんねぇんだけど…」

う……嬉しいです!!
会話に乗ってくれました!!

「手のひらの真ん中を通る線ですよ!!」

「あぁ……なんか、みじけーのならあるけど」

そう言って東郷先輩は僕に左手を差し出しました。
見ると確かにテレビで見たのと同じモテ線です!!『運命線の下辺りから右斜め下に流れている』から間違いないです!!

「すごいです!!ナマで初めて見ました!!」

さすが東郷先輩です!!
見るからにモテるのはわかりますが、手相にも表れているのですね!!

そう言うと東郷先輩に「ただの手の線だろ」と軽くあしらわれてしまいました…

「それに俺、別にモテねぇよ」

「そんなことないです!!少なくとも、チカラさんにモテています!!」

「そ……うでも、ねぇよ…」

東郷先輩は照れてるみたいです。
なんだか微笑ましいですね!!

東郷先輩の左手をもう一度見ると、もう1つ見覚えのある線を見つけました。

「あ、これもあるんですね!!」

「はぁ?次はな……あ」

東郷先輩が僕の後ろを見たので振り返ると、チカラさんが駆け寄ってきました。

「夏樹!!ごめん、待たせて…」

「中谷……俺に謝罪はねぇのか」

そう言いながら東郷先輩はとても嬉しそうです。
チカラさんは東郷先輩にも謝ると「なんの話してたんだ?」と僕に尋ねました。

「東郷先輩の手相の話です!!」

「手相?」

「はい!!東郷先輩の手には、モテ線とアブノーマル線があるのですよ!!」





その日の帰り道は、なんだかいつもより静かでした。
僕、何を言ってしまったんでしょうか…

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あきゅろす。
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