もうちょっとメイクビリーブ
・・・・・・
その後、しばらくテレビを観ていよいよ初詣をすることにした。
夜とも朝とも言えない中途半端な時間帯に神社に向かうと、狙い通りなかなか空いてる。
東郷先輩と一緒に参道を歩いた。
「こんな時間に外出することって、あんまりないですよね」
「そうか?結構外にいるけど……お前、楽しそうだな」
「だって楽しいです。子供の頃に楽しみだったことって今でもワクワクするんですよね…」
ふと東郷先輩を見て、なんだか笑いそうになった。
この人、神社とか似合わないなぁ…
すると、東郷先輩も俺を見て、呆れたようにため息をついた。
「楽しいのはわかるけど……前向け」
「え?」
「さっきから転びそうで危ねぇんだよ」
えっ、そうかなぁ。だって神社の道ってなんだか歩きにくくて…
「腕、つかまれ」
「えぇっ?なんでそんな恥ずかしいことを…」
「つかまれ」
東郷先輩の眼力に負けて渋々ソデをつかんだ。
キングオブ心配性め…
お賽銭箱の前に立ってお賽銭をいれる。東郷先輩は「なんで金なんか…」と嫌がっていたけど、とりあえず入れてもらった。
「お願い事するんですよ!えっと、二礼二拍手一礼…」
目をつむってからお願い事を考えてないことに気がついた。
とりあえず健康……あ、家内安全でありますように。
それと、東郷先輩とは、まぁこれからもそれなりに仲良くいられますように…
いろいろ欲張ってから目を開けると、東郷先輩は隣に突っ立ったままだった。
「先輩、お願い事決まらないんですか?」
「別にそんなもんねぇよ」
「なんか探せばいいじゃないですか。もしかしたら神様が叶えてくれるかも」
東郷先輩は賽銭箱を睨んだまま何か考えて、ボソッと呟いた。
「中谷に近付く不埒な男は全員死ね」
「な……なんでそんな罰当たりなこと願うんですか!」
慌てて東郷先輩のソデを引いて、次の場所へ移動した。
いくら神様でもあれは怒る。うん…
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