もうちょっとメイクビリーブ
∞∞∞∞∞
「東郷先輩ごめんなさい!こんなに混んでるとは思わなくて……待ちましたか?」
「別に」
チカラは待ち合わせ時間の10分後に来た。
待っていたことも忘れるくらい、今日のチカラは可愛い。マフラーや手袋といったアイテムがそう見せているのか?いや、チカラから誘ってくれた日だからだ。
「それにしても、綺麗ですね!」
チカラがツリーを見上げる。
「7時まであと2分くらいです!間に合って良かった」
「なんの話だよ?」
そういえば急に人が増えてきた。
みんな期待の眼差しでクリスマスツリーを見ている。
7時からなんかあんのか?
「……ほら、東郷先輩!」
チカラに促されてツリーを見ると、ツリーの光が一気に増えてカラフルに点滅し出した。
一番上の星は色を変えながら回転している。
群衆から感嘆のため息が聞こえた。
「……だ…」
だからなんなんだ。
「すごい!俺、初めて見ました」
気がつくとチカラもうっとりした表情でツリーを見上げている。どうやらこれが目当てのクリスマス限定ライトアップみたいだ。
いや確かに綺麗だけど、わざわざ見に来るようなもんか?
チカラは本当にこんなもんが見たかったのか?
そんなことを考えてる間にもイルミネーションは色を変えていく。
「うわぁ感動的ですねぇ……ね!東郷先輩っ」
「……あぁ、そうかもな」
どうでもいい…
今すごくチカラとのギャップを再認識してる。
するとチカラが何かに気づいたような顔をした。
「先輩、つまらないですか……?」
「まぁ、楽しくはねぇよな」
「ごめんなさい…」
「別にいい。お前が喜んでんだから」
チカラは半分納得したような顔をした。
ふと振り返ると、後ろのカップルがキスしてる。このライトアップでテンションが上がったんだろうか。
周りのカップルを見ても、見つめあってるかツリーを見てるかだった。
「……中谷」
「え?」
ツリーに見いるチカラの顎をムリヤリ持ち上げて唇を重ねた。
数秒で離すと、チカラは顔を赤くして震えている。
「なっ、なんで……バカ!」
「誰も見てねぇよ」
「でも、そんなの…」
チカラがあたふたしてる間に、照明が元に戻っていった。時間が決まっていたらしい。
「あー、せっかく綺麗だったのに…」
「……来年も、また連れてきてやるよ」
微かに、チカラの顔がまた赤らんだ気がした。
「ケーキ食うんだろ?」
「あぁっ!そうですね!」
チカラは十分楽しんだみたいだし、今度は俺が楽しむ番なんじゃないか?
そんなことを考えつつ俺の家に向かった。
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